ルポライター 永尾俊彦
地方自治法は、第一条で自治体に「住民の福祉の増進を図ること」を求めています。命や暮らしを守ることこそ、自治体の最大の責務だということでしょう。この責務を果たしていない点で、石原都政は論外です。
命の軽視
石原慎太郎氏が都知事になった1999年に東京23区内で餓死で亡くなった人は26人でした。が、2008年には43人に増えています。評判のラーメン屋の前に長蛇の列ができるグルメブームの東京で、餓死者の数がジワジワ増え続けているのです。石原都政が命を守ることを最優先してこなかったことの証左です。
また、2009年には群馬県渋川市の高齢者施設「たまゆら」の火災で10人が亡くなり、そのうち6人は墨田区から生活保護を受けている人でした。なぜ、都民が遠く離れた群馬県で焼死しなければならなかったのか。
この背景には、都内で特別養護老人ホームに入れずに待機している高齢者が4万人を超えているという現実があります。もちろん国の責任もありますが、都の予算は約12兆円で、韓国の国家予算並みです。命を守る施策を最優先すれば、限りなく豊かな福祉都市を実現できるはすです。しかし、都の歳出総額に占める老人福祉費の割合は、99年は3.8%で全国47の都道府県で2番目でしたが、07年度には2.8%で全国最下位に転落しています。
そして、石原知事は都民の税金をオリンピック招致や新銀行東京、三宅島バイクレースなどの自分の思いつきによる人気取り政策や三環状道路建設など環境を破壊する公共事業に湯水のように注いできました。
命の軽視という点で、石原都政は、これまでの美濃部、鈴木、青島知事らと決定的に違います。
ベンゼンやシアンなどの猛毒で汚染されている豊洲地区(江東区)の東京ガス工場跡地へ、築地市場(中央区)を強引に移転させようとしていることも命の軽視の表れです。
今回の大地震で、豊洲では地中の砂が噴出する液状化現象が起きました。都の液状化対策は地層の深い部分はやらず、危険だと日本環境学会の学者が指摘しているのに都は黙殺です。良心的な科学者が原発の危険性に警鐘を鳴らしてきたのに「安全だ」と強弁し、今回の爆発事故を招いた国や東京電力の姿勢と同じです。
看過できない差別発言
このような命の軽視の他に多くの人を傷つけ、やり切れない気持ちにさせているのが石原知事の差別発言や放言です。障害者施設を視察した際、「ああいう人ってのは人格あるのかね」などと言い、今回の震災でも被災者に「天罰だ」などと言い放ちました。このような差別発言や放言は数えきれません。こんな首長が他にいるでしょうか。差別発言は犯罪と規定している国も少なくありません。
今回の都知事選では、このような心も政策も貧しい「貧困都政」からの脱却を願う人々が、広く手を結ぶべきだと思います。
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