2011年5月2日月曜日

国の進路が問われる TPPと日米安保 

                                            田代 洋一(大妻女子大学社会情報学部教授)

 日米トップは、東日本大震災で多少遅れるとしても、TPPへの日本の参加決定を粛々と進める姿勢である。オバマは、大統領再選を目指して5年で輸出倍増によるアメリカ人の雇用確保を狙い、日本その有力なターゲットだ。片や日本も新成長戦略でTPPを通じてアメリカに工業製品を売り込み、「通商国家化」したい。つまりTPPは、このような日米の相互浸透を強めるための競争ルールの変更である。

 ではどのように変更するのか。菅首相はTPP参加協議に向けて二つのことを強調した。一つは「開国と農業再生の両立」、もう一つは「開国」に先立っての国内の規制改革、非関税障壁の撤廃。前者はアメリカ等からの農産物輸入の増大への対応であり、後者はアメリカ資本等に対する日本の規制撤廃で、その主たる場としては金融、サービス、電子取引、政府調達(建設)、医療等の広範な場が考えられる。前者で日本農業は壊滅敵的打撃を受けるが、後者の市場開放・規制緩和が日本の経済と国民生活に及ぼす影響も計り知れない。

 つまりTPPとは実質的に日米FTAであり、そこでの日本の一方的譲歩である。ここで思い起こされるのが日米農産物交渉の歴史である。アメリカが事あるごとに持ち出したのが、日米安保条約第二条の「経済協力」であり、そのための第四条の「随時協議」である。協力・協議とは要するに「防衛での貸しは経済で返される」、すなわち「アメリカは日本を防衛してやっているのだから、そのツケは経済的譲歩で払え」ということである。この「アンポと牛肉・オレンジ」の関係を21世紀に引き継ぐのがTPPだといえる。

 鳩山内閣から菅内閣への移行は、ちょうど「東アジア共同体の時代」から「アジア太平洋における米中対立の時代」への転換期に当たった。アメリカは太平洋国家化をめざし、南シナ海等での経済権益の確保をめざし、中国封じ込め作戦に出た。それに対して中国もまた南シナ海を「核心的利益」として領土主権の主張、アジア諸国との領土対立を強めた。

 それが表面化したのが2010年だ。そのなかで沖縄米軍基地の県外、海外への移転を打ち出した鳩山内閣は、アメリカの逆鱗に触れて倒れ、その「鳩山の失敗」に震えあがった菅首相は早々に日米同盟強化一本槍に舵を切った。そして、その証として持ち出したのがTPP参加である。改造内閣は対中国強硬論者で固められたが、その一人である前原外相(当時)は、TPPは安全保障の面からも重要だと発言している。

 かくしてTPPは日米同盟に直結する。そこで国民が真に問われているのは、安保廃棄か、安保の相対化か、安保強化かの岐路である。少なくとも、米中対立のなかでその一方に決定的に荷担することが、ほんとうに日本の平和、アジアの平和、世界の平和につながるのか。日本はその位置からして米中対立を解くカギを握る立場にある。東日本大震災には米中はじめ多くの国々が救援の手をさしのべた。環太平洋地域において、弱肉強食の関税なき自由競争をくり返すのか、共通する課題に対する協同の絆を強め、その結び目に日本がなろうとするのか、国の進路が問われている。

話題提供 ACジャパン(公共広告機構)のねらい

   仲筑間卓蔵さん 元日テレプロデユーサー

大震災直後からマスコミは、「思いやりは・・」「心づかいを」などAC広告を洪水のように流しています。4月の代表世話人会では、「話題提供」でこのテーマを取り上げ、仲築間卓蔵さんに、お話いただきました。
ACジャパン(公共広告機構)は、企業が金を出し合い「世の中のためになるメッセージを、広告という形で発信しよう」と発足、理事には電力会社、マスコミなどが入っている。
内容はもっともであっても、企業版「修身」教科書を想起するナショナリズムの押し付けで、大震災・原発問題の「責任の所在」をうやむやにする役割を担っているのではないか。このような「目くらまし」は、今に始まったことではないと指摘、メディアはスポンサーである大企業に弱く、警戒と監視が必要である、と述べました。