2020年10月30日金曜日

 今こそ、少人数学級の実現を 

東京革新懇代表世話人、都教組委員長 木下雅英

子どものいのちと学びの保障に

 新型コロナウイルス感染症拡大防止の緊急事態宣言が解除され、ほとんどの学校で6月から数週間、分散登校が行われました。子どもも教職員も20人以下学級の良さを実感しました。子どもたちからは、「発言の回数が増えた」「先生がよく見てくれた」「授業がよくわかった」、教職員からは、「子ども一人ひとりをよく見ることができた」「ゆとりをもって対応できた」などの声があがりました。不登校や不登校気味だった子どもが登校できたり、情緒を乱してしまいがちな子どもが落ち着いて授業に参加したりすることができました。 

しかし、40人学級に戻ってからは、元の木阿弥に。40人学級では子どもと子どもの間隔を広く取ることは不可能です。感染症対策を徹底しようにも、教室内外の水道施設は最小限で行列ができ、給食の配膳・片付けも、コロナ禍以前にも増して時間がかかります。

もう40年以上の長きにわたって40人学級のままです。民主党政権で小1が35人学級、小2が予算上の加配教員を活用して35人学級が可能になりました。都独自には中1のみ35人学級が可能になっただけです。OECD加盟諸国で、国民総生産に占める日本の教育予算の割合は最低ラインです。安倍前首相も少人数学級の良さは認めたものの、学級の人数を決める標準法改定はしていません。都は「切磋琢磨」するには40人学級が必要、少人数学級は国がやるべきこと、習熟度別授業で学力が伸びた、教室が足りないなどとして、少人数「学級」には後ろ向きな姿勢をとり続けています。コロナ禍の今こそ、子どものいのちと学びを保障するために、少人数学級に踏み出すときです。 

子どもたちの願いとこれからの教育・学校 

 教職員が、そうならないように努力はしているものの、学習指導要領、標準授業時数の縛りから、子どもたちは今、コロナ禍以前にも増して、詰め込み・スピード授業を強いられています。また、学校には欠かせない様々な行事が削られている中、子どもたちは、わかりやすく楽しい授業、そして居場所としての希望ある学校を願っています。それには一刻も早い少人数学級の実現と教職員増が欠かせません。これまでの運動で、ようやく政府も少人数学級実現には前向きになっています。さらなる運動の強化が必要です。

また、教室が足りないというのであれば、効率優先の学校統廃合も中止すべきです。学校は地域の宝、文化の拠点です。臨時的であっても、校庭にプレハブや大きなテントを建てることも検討する必要があるのではないでしょうか。

さらに、経済競争の「人材」として子どもたちを育て、競争と格差、自己責任を子ども、保護者に押しつけ、公教育を壊してきた「教育再生」やトップダウンの「教育改革」競争をストップし、憲法、1947教育基本法の理念、子どもの権利条約を生かした教育、学校をとりもどすことが必要です。ICT・AI教育、そして教育の市場化を、コロナ禍に乗じて推進しようとする動きにも注意を払わなくてはなりません。子どもたちの実態や願い、地域の状況に応じて、各学校で教育課程をつくり、人格の完成をめざして公教育をすすめ、行政はそのための条件整備を徹底して行っていく、こうした教育行政、学校に変えていくことが急務です。併せて、憲法に基づいて、教育の完全無償化を実現し、どの子も分け隔て無く学べ、成長できる環境を保障することが必要ではないでしょうか。

 「1年単位の変形労働時間制」ではなく「少人数学級」を

教職員は現在、コロナ禍以前にも増して、長時間過密労働を強いられ、限界に達しています。体調を崩したり、メンタル不全になったりして休む教職員も少なくありません。管理職や同僚によるパワー・ハラスメントも増えており、学校再開後、都教組への相談が急増しています。

それにもかかわらず、国や都が公立学校に「1年単位の変形労働時間制」の導入をねらっています。これは長時間過密労働を固定化、助長するもので子どもと教育にも大きな影響を及ぼします。また、安上がりの働き方をひろげようとする政権のねらいから、全労働者の問題でもあります。長時間労働改善には教職員増と具体的業務の削減が欠かせません。都段階での条例提案阻止、地区段階での規則改定阻止のために、「『変形』よりも『少人数学級を』」の世論を大きくひろげていく必要があります。「ゆきとどいた教育を求める全都全国署名」や「変形」ではなく「少人数学級」を求める都民署名、団体署名へのご協力をお願いします。