2010年8月27日金曜日

話題提供・出版の電子化とマスコミの将来

岐路に立つ新聞産業
                                                                     小平 哲章   新聞労連東京地連委員長 
   新聞産業は今、広告収入の大幅な減少と、若年層を中心としたインターネットで情報を入手し新聞を読まない世代の増加などによる販売部数の低迷で、史上もっとも厳しい時代を迎えています。
新聞無購読2割超える
新聞公正取引協議委員会が全国の満20歳以上の男女4000人を対象に実施した読者調査(2010年1月公表)によると、新聞の購読状況では、有効回答1224人のうち960人(78・4%)が定期購読。購読していないのは264人(21・6%)で1999年の第1回調査以来、初めて20%を超えました。無購読者へのその理由の質問の答えは「テレビやインターネットのニュースで十分」45・8%、「購読料が高い」26.・1%、「家計的に新聞購読料まで回らない」21・2%の順と、「情報取得はネットで」の傾向が見えます。こうした中で、新聞各社は様々な電子部門への施策を展開していますが、成功例はまだ現れていません。

紙から電子媒体へ
現代の形式の新聞が発行されるようになって百余年、紙の情報媒体の「王道」を歩んできた新聞社は今、電子媒体の急速な広がりの波に翻弄されています。
日本新聞協会の「新聞・通信社の電子・電波メディア現況調査」(10年1月1日現在)によると、協会加盟113社のうち、回答87社すべてがウェブサイトを開設しており、総数は200サイトを超えています。電子号外を含め、紙面イメージをWeb配信している社は34社、携帯端末向けの情報提供を行っている社は66社となっており、この部門では無料から有料提供へ切り替える社が増えています。
特に昨年から今年にかけて、新聞界ではネット課金の議論が一気に起こり、電子新聞やWebでの記事閲覧を課金会員制にして「ネットはタダ」という「常識」を改める動きが出てきています。

危惧する声も
こうした施策を打ち出す一方で、新聞社の中には自らの電子媒体への過剰傾倒が紙の新聞の価値を下げ、さらに新聞の脅威となることを危惧する声もあります。労働者側も「新分野の媒体の研究は必要だが、電子媒体へ傾きすぎて、長年、業界が培ってきた知識や技能が軽視されていないか、急激な新施策の推進でジャーナリズム機能が衰えていかないか-を検証しつつ、この事案に対処するべきだ」との認識です。

健全なジャーナリズムの確立を
電子化への安易な転換が人減らしにつながり、蓄積型技能は不要として非正規雇用拡大につながる恐れもあります。このことを踏まえ、新聞の本来的責務である権力へのチェック機能を果たし、表現の自由を守ることで市民の知る権利に応え、報道機関としての信頼を維持することが大切で、「二度と戦争のためにペンを、カメラをとらない、輪転機を回さない」との誓いを思い起こし、平和な社会を築いていく力になることも、私たちに与えられた重要な課題です。

そのためには「社会の公器」をつくる側にいる労働者が新聞の価値を再考し、電子部門への対応では「電子か紙か」の二者択一ではなく、利益優先の拙速な施策には厳しい目を向け、技術革新の波に飲み込まれず、健全なジャーナリズムを確立する闘いを構築していく必要があると考えています。

2010年8月25日水曜日

~ポリティカにっぽん 激動する政局を斬る~

「参議院選挙の結果と今後の政局」
=東京革新懇;世話人会・代表者会議の記念講演=
 早野透さん(元朝日新聞編集委員)


東京革新懇は7月17日に世話人・代表者会議を開催、その記念講演で早野透さん(桜美林大学教授)が講演しました。講師紹介で高岡岑郷代表世話人は、朝日新聞を退職され愛読していた「ポリティカにっぽん」を読めなくて残念に思っていたが、記事を書くつもりで講演されることを楽しみにしていると述べました。

 腑に落ちない選挙結果 
今回の参議院選挙は、総じて、腑に落ちない結果であった。多くの国民は、鳩山政権も困ったものであるが、自民党にも任せられない、という気持ちだったのではないか。しかし、当選者数は、民主党44議席、自民党51議席という予想外の結果となった。
朝日新聞の社説「一票の格差、選挙結果ゆがめた深刻さ」(7月15日)は、「目からウロコ」の内容であった。今回の選挙区での最大格差は、神奈川県と鳥取県の間の5.01倍だった。神奈川では69万票を集めた民主党候補が落選、鳥取では15万票台の自民候補が当選した。東京の小池さんなど大阪、北海道、埼玉では、50万票を超えた人が敗れた。選挙区で、民主党は2270万票で28議席を得た一方、自民党は1950万票で39議席を獲得した。民主党は『軽い一票』の都市部での得票が多く、自民党は人口が少なくて「重い一票」の一人区で議席を積み上げた。自民党の一人区勝敗は、21勝8敗であった。
また吉田徹北海道大准教授は、「不幸」な選挙だった、と朝日新聞で意見を述べている。第1に、民主党政権の中間テストのはずであったが、選挙の直前に鳩山氏が辞任し、菅首相が「替え玉受験」を行う形になった。第2に、菅首相が消費税を打ち出したが、自民党10%を「参考」としたため争点とはならず、有権者を混乱させた。第3に、選挙後の政権構想、連立の構図が描かれなかった。では、「幸福」な選挙とは何か、自分の一票の効果感が持てる選挙ではないか。
89年以来これまでも衆参の「ネジレ」があったが、今回は本格的な「ネジレ」で、法律が成立する見通しがなく、菅首相は「しょんぼり」しているのではないか。

民主党が後退した理由は
民主党政権は、表紙を替えて内閣支持率のV字回復を図ったが、一本調子で右肩下がり。これは、消費税もあるが、「政治とカネ」「普天間基地」で誠実でない態度をとったからではないか。鳩山氏は理想主義者であったが、現実主義の菅首相は、「最小不幸社会」などと言っているが、何が目標なのかわからない。田中真紀子氏は、「アキカン」と表現している。菅首相はディべートが得意であるが、やりこめることでなく、国民が一緒にやろうと思うかである。歴代の自民党首相の中には懐深い人物がいた。
菅首相は財務大臣としてギリシャ危機に直面し、財政再建を重視するようになった。優秀な財務官僚の入れ知恵があり、消費税の増税を打ち出したのではないか。800兆円もの借金があり、多くの国民が「それはそうだ」、孫に負担させるわけにはいかないと思ったのは素直な感情であった。しかし生活が苦しい中で、批判は民主党に向かい、自民党は抱きつかれて得をした。共産党は、法人税減税の穴埋めと訴えていたが、それはその通りだが、正論の空振りに終ったのではないか。

どうなる連立の構想は
無党派層の支持を集めたみんなの党は躍進し新党も多くできたが、個々の事情を考えると、1年先はわからないが、当面、民主党との連立は難しいのではないか。菅マニュフェストには、「コンクリートから人へ」はなく、「日米同盟を深化」と明記され、生活重視から経済・統治へとカーブを切った。政策的に似ている民主党と自民党による「大連立」という危険があるのではないか。消費税増税とセットで議員定数が削減されると、共産党・社民党などは議席を失う。憲法改正論者も蠢動しており、国民投票が勝負、のんびりしているわけにはいかない。
政局の焦点は、9月の民主党の代表選挙である。菅代表が延命できるのか、首相が毎年交代していいのか。小沢派、反小沢派、鳩山派がどう動くのか、先行き不透明である。

共産党への苦言と期待
私は、教条的護憲論者と言われ、憲法を大事にしてきた。その立場から、共産党、社民党には、しっかりしてもらいたいたいと思っている。共産党は、いいことを主張していても、なぜ支持が広がらないのか。「負けは負け」で、けじめが必要である。どうやったら立ち直れるか、きれいな文章ではなく、本気で総括する必要がある。ご健闘を期待する。(文責、編集部)