2014年9月10日水曜日

アベノミクス破綻のはじまり

今宮謙二
(中央大学名誉教授。東京革新懇世話人)

GDP大幅落ち込み
 アベノミクスによって長期不況脱出の道が開け、景気回復が順調に進んでいるとマスコミでもてはやされていますが、その現状はどうなっているでしょうか。
 結論的に言えば、アベノミクスは破綻しはじめたとみてよいでしょう。それは8月に発表された国内総生産(GDP)4-6月期の数値にはっきりあらわれています。実質成長率は前期比マイナス6.8%(年率)、家計消費は前期比マイナス5%、年率18.7%と大幅に下落しました。特に注目すべきは家計消費の落ち込みで、比較可能な94年以降で最高であり、また消費税増税以前の1-3月期の駆け込み需要の2%と比較しても大きく、「反動減」を上回っています。
 海外論調一転
これまでは比較的アベノミクスを評価してきた海外の論調も一転してきびしくなってきました。例えば、イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙は「アベノミクスの欠陥があらわれ、事態はさらに悪い方向に進みかねない」と指摘し、アメリカのウォール・ストリートジャーナル紙「日本経済は崖から突き落とされた」との社説をかかげ、アメリカの通信社ブルームバークは「アベノミクスは回復ではなく、苦しみの記憶となりかねない」との論評をのせています。
 アベノミクス破綻の四つの根拠
政府や日銀はこの落ち込みは想定内であり、7-9月期は回復し、日本経済の景気は順調と強調していますが、実態はそうではありません。これは明らかにアベノミクス破綻の進行であり、その根拠は次の四点にあります。
第一は大多数の国民の生活水準の低下があらわれている点です。物価があがる一方賃金はあがらず実質賃金は下がるのみです。それに消費税増税が家計を直撃しています。社会保障の切りすてでお年寄りの暮らしも苦しくなるばかりです。国の経済の6割を占める家計消費が伸びないのは当然です。
 第二は非正規労働者がふえ、低賃金と長時間労働が広がり、働く人びとの生活そのものが破壊されつつあります。アベノミクスは人間の生存権、労働権すら奪おうとしています。
 第三にこのような家計消費力が低下するもとで、国の基盤を支える中小企業や商店など地方経済の衰退化や農林水産業などの弱体化が進み、日本経済構造そのものが衰弱しはじめてきています。
 第四にアベノミクスによって財政危機が深まり、金融不安のおそれ、格差拡大など社会不安も広がりはじめています。この不安をおさえるため安倍首相は偏狭なナショナリズムを声高にとなえているのです。
 一刻もはやく安倍内閣の退陣を 
このように破綻しはじめたアベノミクスがもてはやされてきたのは、異常な金融緩和政策や大幅な財政出動など大企業重視政策を行い、株価上昇などを通じて景気上昇の期待を国民にもたせたからです。しかし、この政策は一部の大企業や富裕層を豊かにさせましたが、国民生活向上の期待は裏切られました。
 国民の期待をつなぐため、アベノミクスは第3の矢として成長戦略をかかげていますが、その内容は法人税減税、労働などの規制緩和など大企業の利益のみを守るものでしかありません。さらに重視すべきは軍需産業を拡大して「戦争のできる国」への道を歩みはじめようとしている点です。

 アベノミクスが進み、さらに来年消費税増税が強行されれば、日本経済の基盤はさらに破壊されます。一刻もはやく安倍内閣を退陣させるとともに大企業の社会的責任を徹底的に追求すべきです。