2012年7月19日木曜日

 家庭用料金が高くなる仕組みの見直しを

   東京電力の電気料金値上げを考える

鈴木 章治さん(「世界&日本のエネルギー労働者と連帯する会」代表理事、元東電労働者)
 
 事故を起こした経営責任の欠如露わ
 電気料金値上げの公聴会を経産省HPで知り申請し7日の東京会場で陳述したが、東京会場10人、埼玉会場5人と少ないのに驚いた。経産省はHPを見ろという姿勢、陳述が少ないのは経産省に国民に知らせる姿勢がないからだと経産省に意見をあげた。
 今回の値上げのきっかけは、原発事故でが、いま現場の現状は「砂上の冷温停止状態」。全て仮設で綱渡りの危険な状態が続いている。東電は、事故の最大の要因が「安全神話」にあるにもかかわらず、全く反省がなく、津波対策を怠った「人災」との指摘も認めとせず「予想外」を繰り返している。それに加えて、申請は、刈羽崎刈羽原発の再稼働を前提している。その様な値上げは認められないと陳述した。
 原発の再稼働が前提
 東電は「全原発停止で、火力発電の燃料費が増加した」ことを値上げの理由にしているが、この理由の正当性は全くない。事故を起こしたのは東電だ。しかし、その東電は事故原因の究明を怠り、安全神話への反省が全くない。
 原発ゼロに向けて国民的な運動が起こり、再稼働への批判が高まっているなか、政府も議論の途上なのに今度の値上げには柏崎刈羽原発の再稼働を前提とし、いわば原発依存の先取りだ。
儲けを補償する総括原価方式の見直しを
電気料金は、「適正費用十公正報酬」を内容とする総括原価方式で決めている。値上申請を見ると、総原価57624億円のうち、約2247億円が核燃料費、福島原発の修繕費など原子力関連費用で占めている。第2原発の復旧費用、第一の維持費用も原価に組み込まれている。これらは再処理積立金などから引き当てるべきだ。原発関連コスト分をカットすれば、値上げ率を半減することができる。
 公正報酬とは電力会社の儲けの保証、申請では事業資産価値(レートベース)の3%が事業報酬だ。一部を除き原発資産も対象になっている。報酬率3%も現在の金利状況からみても高すぎる。これは国民感情にそぐわない。
 家庭用料金が高くなる仕組みも見直しを
 大企業など大口電力と家庭用の電気料金の格差が指摘されている。発電から需要家までの設備の違い、その間の送電ロス、電気の使われ方によって格差が生じると説明している。遠距離・大規模電源を作り、超高圧から家庭用100V200Vに下げるのに変電設備が幾重にも必要というのは電力会社の理屈で、現実に家庭用でも3段階料金など個別原価配分が事実上崩されている。電力会社以外の新電力(PPS)が広がりるなかでこの仕組みも見直すぺきである、
 原発に依存しないエネルギー政策の確立を
 電力会社は、大規模・遠隔地立地、超高電圧電源開発で高額の設備投資を行っても、電
気料金で回収できる仕組みのなかで、利潤追求・効率性を追及する経営をすすめてきた。
これからは、太陽光や風力など自然エネルギーの開発・促進、地産地消の電力システムの構築など、抜本的な電力政策の転換が求められている。 
 「人件費削減をどう考えるか」との質問に答えて、「一般社員は既に年収2割の削減が行われ、平均年収は556万円。中小企業と比べて高い水準だが現実にローンの支払の滞りや今後10年続くと言うことで働く意欲を低下していることも現実。同じ人件費に含まれる役員報酬の削減は当然であり、原発コストや事業報酬など人件費削減よりも減らすべきコストはあるのではないか」と述べました。