2017年6月1日木曜日

核兵器禁止へ新たなステップ

核兵器禁止条約実現の新たなステップと
被爆国日本の運動の役割
             日本原水協事務局長 安井正和

画期的な核兵器禁止条約草案
522日、欧州国連本部で核兵器禁止条約の草案が国連会議のエレン・ホワイト大使によって発表されました。日本原水協はこの草案を「心から歓迎する」事務局長談話を発表しました。被爆者や被爆地の広島、長崎の市長も歓迎の声を上げました。
談話では、歓迎の理由として以下の4点述べました。
一つは、核兵器によって引き起こされた被爆の実相と核兵器使用の人道的帰結に関する知見を踏まえ、核兵器が三度使われてはならないとの決意を明確にし、人道と相容れない戦闘手段・兵器の使用を禁止するという立脚点を明確に確認していることです。
二つ目に、第一条で使用はもちろん、開発、生産、製造、取得、保有、貯蔵のすべてを明確に禁止していることです。
三つ目に、核兵器の使用、実験によって引き起こされた被害についても人道法と人権法に沿った支援の提供を打ち出していることです。
四つ目は、前文で被爆者、核実験被害者の苦難に特別に留意し、また国連、赤十字とともに市民社会の運動と被爆者の努力に言及したことです。
これらは、日本の原水爆禁止運動が創立以来、被爆者とともに掲げてきた核戦争阻止、核兵器全面禁止・廃絶、被爆者援護・連帯との基本目標とも精神を一つにするものです。
 草案は、615日からはじまる第二会期で審議され、77日の閉会日までに採択される予定です。草案では、批准が40カ国に達した時点から90日後に発効することになっています。
日本原水協は、第二会期の国連会議には、一つでも多くの国が参加し、核兵器禁止条約の審議・決定・採択の歴史的事業に加わるようよびかけるものです。 
問われる被爆国日本の態度
問わるのは日本政府の態度です。日本政府は、3月の交渉会議にあたり、高見澤軍縮大使が最初の「ハイレベルセグメント」で演説し、終えるとすぐに退席しました。会議に参加した被爆者が「裏切られた」と怒りの声を上げ、内外から厳しい批判が寄せられたのは当然です。
日本政府が不参加の理由の第一に挙げたのは、北朝鮮による核実験とミサイル発射という「現実」です。北朝鮮が、核実験、ミサイル発射を即刻やめ、国連安保理決議の順守、六カ国協議での合意や日朝平壌宣言に立ち戻るべきです。
安倍首相が「全ての選択肢がテーブルの上にある」とのトランプ大統領の発言を、繰り返し「高く評価する」と表明しているように、平和的外交的解決の努力は一切見られません。
 ホワイト議長は、22日の条約草案発表に当たり、「禁止条約を実現することで、我々は、いま国際情勢が求めている核軍縮・不拡散を前進させることの緊急性に応えようとしている」と述べています。日本政府はアメリカの「核の傘」に依存する自らの態度に再検討を加え、核兵器禁止条約実現の事業に加わるべきなのです。 
被爆国の運動の責務
「核兵器のない世界」は外交だけ、政府レベルの努力だけでは実現しません。世論の力で現状を変えていくために、日本原水協は、被爆国の運動の責任として、広島・長崎の被爆の実相を世界と日本の若い世代、次の世代に被爆者とともに伝え、形にしていくこと。被爆者の訴える「ヒバクシャ国際署名」を共同の力で前進させていくことをよびかけています。

草の根から行動をひろげ、8月の原水爆禁止世界大会を、政府と市民社会の共同を次のステップに押し上げる歴史的な大会として成功させようではありませんか。