2013年12月18日水曜日

安倍政権の「成長戦略」を斬る

「アベノミクス」の虚像と実像
 
 1116日開催した東京革新懇の友寄英隆氏(前「経済」編集長)講演のエッセンスをご紹介します。

アベノミクス」
         の特徴
 「アベノミクス」は、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3本の矢とされているが、消費税増税という「第4の矢」、社会保障制度改悪という「第5の矢」を隠して議席をかすめ取った。
 日本資本主義が十数年の間に陥っている「デフレ」的な現象は「3本の矢」では解決できない。「アベノミクス」の強行は、グローバル化を推進する財界・大企業の利益を増大させ、短期的には日本経済で一時的な「回復感」をつくり出しているが、長期的には、国民の暮らしや雇用を破壊して、日本経済の破たんにいっそう拍車をかけることになる。
成長戦略」の実態
 「成長戦略」のために設置されたのが「産業競争力会議」で、竹中平蔵慶大教授や「グローバル展開」をめざす8人の経営者が入っている。議事録を読むと、日本企業の海外展開、グローバル企業の「国際競争力」のための戦略検討に終始している。「国家戦略特区」として「解雇特区」をねらい、批判の集中でやや手を緩めたように見えるが絶対に油断できない。竹中議員は「国家戦略特区は成長戦略の最重要政策。岩盤規制を打破しなければ。雇用分野含め、国家戦略特区を完成させるべく全力尽くす」と発言している。
国民の立場からの成長戦略には何が必要か
 日本経済は行き詰まり、「本格的な改革」が必要な時代に入っている。民主的な変革の政策と戦略が求められ、「原発ゼロ」へのエネルギー政策、民主的な労働改革、農業再建、税・財政の民主的改革、日米安保優先の通商政策からの転換などである。とりわけ経済再建の最大の鍵は思い切った賃上げと中小企業政策である。
 1997年から2012年の間に、賃金は70兆円減少、資本金10億円以上の大企業の内部留保は100兆円増の270兆円。労働総研は、全国一律1000円の最賃の原資は62千億円と試算している。
 中小企業予算は、わずか3000億円、予算全体の0.4%。「異次元の中小企業対策」で少なくとも1兆円(2%)、計画的に5兆円ぐらいに増やす必要がある。
アベノミクス」の国際的背景
 1%の富裕者が、その国の所得のどれだけを独り占めしているか、米国、イギリス等では1980年後半から急激に富裕者の所得が増えてきた(グラフ参照)。1970年代に入る頃から新自由主義型の経営戦略と経済政策が推進されてきたからだ。新自由主義路線は、経済構造を歪め、ついに08/09年の世界的な金融危機が勃発した。
 新自由主義路線の歪んだ経済構造を改革しないまま、なし崩し的に財政・金融を急膨張させたため、深刻な財政危機と投機マネーの再膨張をもたらした。2010年以降、財政危機が、南欧諸国からEUに広がり、大銀行・大企業を守るために膨大な資金を投入しながら、国民犠牲の緊縮政策を強行してきた。
 今日の国家債務危機の根源は、新自由主義路線によって、各国が「法人税率引き下げ競争」に巻き込まれ、巨額の税収の空洞化を生みだし、赤字国債を増発したからだ。それが行き詰まり、世界的に超金融緩和政策によって危機を下支えしよとの流れが強まり、「アベノミクス」はそれを日本に持ち込んだものだ。
世界的な経済危機は、新たな「過渡的な時代」の始まり   いま世界は、新自由主義の支配した時代を乗り越えるための、新たな「過渡的な時代」に入りつつある。08年の金融危機・世界恐慌を契機に、労働者・国民のたたかいが高揚の時代に入っている。世界各国で若者や労働者・市民の運動が盛り上がり、歴史の本流と逆流の“激しいせめぎあい”の時代が始まっている。21世紀の世界史を貫く「変革の流れ」は、日本でもはじまりつつある。
 2013年から2014年にかけて、「世界と日本の歴史の本流」をみすえた労働者・国民の運動の発展が期待される。まさに革新懇運動の出番の時代である。