2012年9月2日日曜日

 なぜマスメディアは
「市民目線」を失ってしまったのか
   東京新聞「こちら特報部」
   総括デスク 野呂法夫さん
     中野区革新懇が総会と記念講演
原発事故、消費税増税などの報道を契機に、国民は、マスメディアの報道姿勢に不満を募らせています。このような中で、中野革新懇は7月22日に、東京新聞「こちら特報部」総括デスクである野呂法夫さんを招き、講演会を開催しました。「こちら特報部」の一連の原発報道は高く評価され、「日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞」「新聞労連大賞」を受賞しています。

特報部はどんな組織?
野呂さんは、特報部は総勢12人の少数だが独立した部なので、「記者クラブと発表(官製)ジャーナリズム、セクショナリズム(持ち場主義)」から自由で、独自の問題意識と取材で記事が書けると紹介、それが特報部の特徴だと述べました。

当局発表に依存しない原発報道
福島第1原発事故について、13日朝刊で「炉心溶融の衝撃」「『絶対安全』甘すぎた」の見出しで報道。これは記者クラブや政府の発表待ちでは書けない記事で、これまで原発事故の現場や国の高すぎる許容放射能の設定問題などを追及する報道を続けてきた。
いまだに「安全神話」をつくった「原子力ムラ」にとどまるメディアもある。これは記者が、市民目線に立っているかどうかが問われる問題だと指摘しました。

JCJ大賞、新聞労連大賞を受賞
「こちら特報部」の誌面では、原発反対集会を積極的に取り上げ、許容被ばく線量問題にとどまらず、「原発安全神話」の虚構、電力会社の需給予測のごまかし、大飯原発再稼働を巡る関電や政府の言い逃れなどの追及と検証を行った報道が評価され、2012年度「日本ジャーナリスト大賞」(注)、「新聞労連大賞」を受賞したと語りました。

市民の記録者でありたい
さらに、原発に対する見方は社内でもいろいろだが、私は「市民の記録者」でありたい。人間の記憶の半減期は短い。それだけに記者として書き残すべきことを記事にしていきたいと決意を述べ、「3.11以降、日本は変わらなければならない」「官邸前デモは新しい民主主義の胎動」と講演を結びました。
(文責、編集部)

(注)JCJ賞・贈賞式(811日)における講評;「メディアの権力チェックが弱まる中、原発事故をめぐって大本営発表報道が続き、将来の歴史の評価に耐えられない状況だった。そのメディアの危機を、市民の立場で厳しく継続的に追及してきた特報誌面が救ってくれた」(柴田鉄治JCJ代表委員)