2022年12月13日火曜日

統一協会

 統一協会の正体とその活動

 全国霊感商法対策弁護士連絡会共同代表 山口 広さん

 119日に東京革新懇主催の統一協会学習会での山口広弁護士の講演の要旨を紹介します。 

統一協会の第一の特色

4つの特色があり、第一は宗教団体というよりも、文鮮明が夢想する地上天国を実現するための様々な活動する組織。その手段として宗教的言辞を使っている。統一協会は日本では宗教団体だが、韓国では宗教法人格は取っていず財団だ。様々な部門をもち、アメリカではマグロ貿易をやり寿司バーを数十件運営している。

 文鮮明は、「共産主義などどうでもいい」「反共は政権に近づく手段に過ぎない」と言っている。ゴルバチョフ大統領にも食い込み、金日成、金正日、金正恩と握手し、相当額を献金している。カンボジアのフンセンとも仲良くしている。

 自分が食い込めるならどこにでも行く。天一国、北朝鮮みたいな国をつくり、自分が王様になりたいのだ。イエスキリストは人類を救い損ねた。神様はそれを悲しんで、地上に再臨のメシアを遣わしたのが俺だ。これを信じているのが統一協会の信者だ。

 言論出版部門も持っており、世界日報は日本でだいぶ落ちてきているが、アメリカでは倒産した新聞社を買収し、超タカ派のワシントンタイムスを出し、共和党に食い込む大きな手段になっている。毎年100億円の赤字をだし、日本の信者が集めたお金を送金している。

民族主義の宗教団体

資料の「天聖經」は、文鮮明の喋った内容を本にしたもの。その中で「韓半島は何かと言えば、男で言えば生殖器です。半島です。島国(日本)は女性の陰部と同じです」「日本が47年間で世界の経済大国になったのは、日本が優秀でそのようになったのではないのです。エバ国家に選んだゆえにそのようになったのです」と語っている。

 日本は韓国に戦前様々な罪を犯した。償いをしなければならない。日本の信者たちはお金を巻き上げ韓国に運べ。天一国を実現する、韓国と北朝鮮を併合するためと文鮮明はあちこちで言っている。

 宗教的要素を言うと、統一協会はまず霊界の存在を教える。霊界は天国、中間霊界、地獄。私たちの先祖は地獄で苦しんでいる。地上で過ごす60から100年は、永遠に続く霊界で過ごす準備期間だ。先祖は救いを求め、早く気づいてほしくて、交通事故を起こしたり、夫の不倫、子どもの不登校、すべての不幸の原因は先祖からのシグナルだ。解決するためにまことの象徴としての財を捧げなさいと献金させる。本人たちは、その人の救いになると信じ、本気でターゲットを説得する。

 人類の先祖はアダムとイブ、アダムとイブがセックスし、原罪を背負った子どもが生まれた。その子どもの子孫が我々なので原罪を抱えている。男女が、相手が素敵だと思うのは原罪があるからだ。払拭のため、文鮮明が選んだ配偶者と合同結婚式で洗礼を受け、誠の家庭をもつ、これが人間の本来のあるべき姿だと教える。性教育、夫婦別姓、同性婚、LGBTに真っ向から反対する。 

全国弁連立ち上げる

 1987年に全国霊感商法対策弁護士連絡会を立ち上げた。日弁連が、意見書をつくって出せということで、霊感商法の背後には統一協会の影があるとの意見書を出し、朝日新聞1面トップの記事になった。以降、霊感商法の違法性が次々と裁判で認められるようになった。92年に桜田淳子、山崎浩子さんらの合同結婚式の報道があり、その時に、やめたばかりの元信者が、顔も名前も出して批判し、統一協会が如何にひどい団体か明らかになった。

 2000年以降、メディアがなかなか報じてくれなく、警察も摘発してくれなかった。2007年から2010年、警察が、合計13件、幹部を含め信者を30人以上逮捕。東京のかなり売り上げをあげていた「新生」の社長とナンバー2が裁判にかけられ、懲役刑の判決が出ている。

 2012年文鮮明死去し、後継争いでゴチャゴチャになり、内部情報が我々のところにも伝わってきた。 

政治家とのかかわり

 1967年、朴大統領の独裁政権に文鮮明が食い込み、勝共連合を立ち上げた。当時のKCIAの中枢に統一協会の幹部信者が入り込んだ。アメリカへのKCIAの政治工作の先兵が統一協会だった。

 日本にやってきて、岸信介は、文鮮明は使えると仲良くなり、笹川良一、児玉誉士夫と勝共連合を立ち上げた。

 文鮮明は、コリアゲート事件で問題になっていたニクソンをサポートするために、大量の日本人女性を連れて議会工作を行い、ニクソン政権に食い込んだ。

 民主党のフレイザー議員を中心に、KCIAのアメリカ議会工作は問題がある、資金源として統一協会があることを問題にし、公聴会も開かれた。文鮮明は、アメリカにおける政治工作はきちんとやらなければだめだと総括し、ワシントンタイムスを創設した。 文鮮明は、1年下獄したあと、ブッシュ、子ブッシュ、レーガン、トランプに食い込んだ。

 日本の政治家は、霊感商法批判が広がり、文鮮明や統一協会に近づくことは表向き避けていた。安倍政権が出来、自民党議員が挨拶したとか記事に載るようになった。安倍首相が、韓鶴子さんに敬意を表しますとの動画を出した。2021年の集会の動画を見た山上徹矢が銃撃事件を起こしてしまった。

 この間、自民党政治家といかにつながってきたか明らかになってきた。その中で、病理現象と思うのは、統一協会の支援を受け、2013年参院選で北村経夫が当選、2016年に宮島嘉文が当選、2019年は北村経夫が再選、2022年宮島嘉文が安倍に今回は別の候補を応援すると言われ、立候補を断念。安倍晋三と統一協会チームが、立候補を含め、殺生与奪を牛耳っている。自治体議員への浸透ぶりもひどいものがある。

宗教法人法にもとづく解散

 文化庁宗務課に、これだけの違法性、霊感商法での判決も次々に出されているから宗教法人法81条にもとづく解散請求してくれと求めてきたが、刑事事件がないからダメとか言っていた。ようやく岸田さんは民事判決でも理由になると言い直した。宗務課も大きな歯車が回り始めたと受け止めているようだ。解散まで行くと実感している。

 ただ、解散がお終りではない。オウム真理教は、解散命令出たが、3000人ぐらいの信者がいて伝道活動をしている。統一協会は、もっとしぶとく残るだろう。

統一協会よりももっと詐欺的犯罪集団がネットで人集めが簡単にできる。10人、20人のカルト的団体が山ほど出来ている。それらに対応できる条文を入れるよう要求している。 

深刻な信仰二世の問題

 文鮮明は神様を代弁するメシア、そう信じて動いている人たちが神様に一番近い人、その人のしもべが父、母、指示は絶対と信じている。何がつらいかというととことん貧乏。もっと深刻なのは人を好きになってはいけないこと。あの人をいいなと思うことはサタンの誘惑とされる。精神のバランスを崩してしまう。

 ファミリーサポートセンター事業

 最後に問題提起。国がすすめるファミリー・サポート・センター事業、統一協会が推進している家庭教育支援条例、11県で制定され、町村でもいくつか出来ているが、つながっているのではないか。統一協会は、家庭教育を促進するためにサポートする組織をつくりやっていこうを呼びかけている。資料のファミリーサポートコーチング協会の趣旨では「真の父母様の勝利圏が広がり、天一国時代を迎えることができました。神様のみ意を尋ね求めながら生きるならば、幸せに導かれる神様の存在を実感するでしょう」と統一協会のものだ。

 令和3年度予算が1693億円、4年度1748億円。実施市町村は令和3971市町村、4956市町村が、子育て援助活動支援事業を行っている。支援金は、会員数100299人の団体には200万円を上限に会員数に応じて段階的に設定。統一協会がやっているのじゃないか、ウオッチする必要がある。

2022年7月25日月曜日

 ジェンダー平等は中心課題

 全国革新懇代表世話人・東京革新懇代表世話人

            弁護士 杉井静子 

521日の全国革新懇総会での杉井静子さんの特別発言をご紹介します 

 国連の女性差別撤廃条約の前文では、「国の完全な発展、世界の福祉及び理想とする平和は、あらゆる分野において女子が男子と平等の条件で最大限に参加することを必要としている」とうたわれています。ですから、全分野でジェンダー視点での点検と平等を具体化する実践が求められています。また、国連のSDGs17項目の目標は、貧困の解消とジェンダー平等の実現がベースになっており、ジェンダー平等の課題はあらゆる分野にありますが、三点にしぼって発言します。 

第一に男女賃金格差の問題 

(1)世界経済フォーラムの日本のジェンダーギャップ指数は、156カ国中120位。大きな要因の一つが男女賃金格差。主要7カ国の中で最も格差が大きく、2020年の厚労省調査でもフルタイムで働く女性の平均所定内賃金は男性の7割です。

 年収200万円未満のワーキングプアの女性が正規で15.5、非正規で56.2%。大多数の女性が自分の収入では生活できない低賃金です。

(2)女性は低賃金でいつでも首切れる非正規の労働力と位置づけられ、日本経済を支えています。男女賃金格差を正当化する理屈は、女性は長時間労働に耐えられず、家事、育児の負担があるということです。男性に比べ“半人前”の労働力とされ、不安定雇用を強いられています。共働きが多数になっているのに、性別役割分業のイデオロギーの下に、低賃金・非正規が正当化されています。

 今日では男性、とりわけ若い男性労働者の多くが非正規で低賃金で働かされています。男女賃金格差の是正は、労働者全体の賃上げにもつながる男女共通の課題です。

(3)男女賃金格差を支えるもう一つの側面は、女性が圧倒的に多数を占めるケア労働の賃金の低さにあります。政府はケア労働者について、一定の賃上げ政策をとりましたが、月額10万円以上の賃金格差解消にはほど遠いものです。ケア労働が低賃金なのは、性別役割分業の下で家事労働の延長とみなされているからです。しかし、子育て、介護、看病等のケア労働は、政府が公的に位置づけ保障すべきです。北欧諸国などでは、ケア労働者が公務員と位置づけられています。

 女性が対等に働き続けることを保障するには、保育園、介護施設の拡充が不可欠であり、それは政治の責任です。

(4)男女賃金格差は日本経済の根幹であるため、たやすく是正できませんが、男女賃金格差を可視化することが是正に向けての第一歩と言えます。政府は企業に男女の賃金格差の開示義務づけを打ちだしました。共産党議員が国会でくりかえし問題提起した成果です。運動の一定の成果と言えるでしょう。

(5)賃金格差は「生命の値段の格差」でもあります。交通事故で被害者が死亡した場合、男の子と女の子の遺失利益が、数千万円も違います。平均賃金をもとに計算しているからです。は下級審の判例では、男女の平均賃金で計算するものも出ていますが、最高裁は男女別の女性の低い平均賃金での計算も是としています。男女の賃金格差は“生命の値段”の格差で人間の尊厳を侵す問題です。

 第二に家父長制度的家意識の問題 

(1)日本社会に未だまん延するジェンダー差別の根っこにはこの意識があります。

戦前の「家」制度は戦後廃止されました。しかし、憲法24条で個人の尊厳と両性の平等がうたわれ、憲法施行75年が経つというのに、この「日本的家族観」は社会の隅々に残り再生産されています。女性差別撤廃条約が掲げているように、慣習も含め日常生活から変えていかなければなりません。それが条約締約国の義務です。また、国民も声をあげていかないと意識は変わりません。

(2)いまだに家父長制に通じる法律が残存しています。戦後「家」制度廃止にあたって守旧派とのはげしいせめぎ合いがあり、民法の家族法の部分は極めて不十分な改正にとどまりました。

その一つが戸籍制度であり、夫婦同姓の強制です。戸籍は個人籍にせよとの意見もあった中で、「夫婦と未婚の子」の「家族籍」となりました。戸籍「筆頭者」は残り、筆頭者の氏のもとに家族が同一の戸籍にくくられました。筆頭者は、従来の慣習の下で90%以上が夫の姓となり、妻は事実上改姓を余儀なくされ、今日に至っています。

 今日、「戸籍」制度は矛盾が露呈してきています。その一つが「婚氏続称制度」です。戦後しばらくは婚姻により改姓したものは、離婚により必ず旧姓に戻りました。氏(姓)は「家」の呼称であったからです。女性たちの運動で1976年に民法が改正、離婚した者も婚姻中の氏の続称が可能になりました。しかし、離婚した妻が再婚するときは、また夫の氏に改姓する人が多く、氏(姓)は個人の呼称になりきっていません。再婚した妻が前夫との子を自分の現姓(氏)にするには、現夫と子との間に養子縁組をしなければなりません。

 最高裁が、いまだに夫婦別姓を認めない民法を違憲としないのは、氏(姓)は個人の呼称ではなく「家族」の呼称と考えているからです。

 日本会議などが夫婦別姓に反対するのもそこにあります。夫婦別姓の実現は、「家」意識の残滓をとりのぞき、戸籍制度をくずすきっかけになるからです。

 夫婦別姓の実現は、個人のアイデンティティの源である氏名を個人に取り戻す、個人の人権と尊厳にかかわる問題です。

(3)わが国では各種の社会保障制度上に世帯単位原則があります。税制上の配偶者控除制度、健康保険上の家族給付制度、年金の第3号被保険者制度などです。夫に養われている妻が優遇される制度です。独身者や自営業者の妻やシングルマザーなどにはない制度です。ここにあるのは「世帯」という名の「家」の保護であり、「世帯主」を想定する制度設計です。離婚のときに問題となる児童手当、コロナ禍での各種給付金の支給は「世帯主」が支給の窓口。個人単位の制度に変更していく必要があります。

 最後に強調したいのは、政治分野でのジェンダー平等 

(1)日本のジェンダーギャップ指数は、政治分野では156カ国中147位、前回より順位を下げています。日本の衆議院議員の女性比率は1割以下。世界では下院の女性比率は、アイスランド47・6%、スウェーデン47%、フランス39・5%。日本の地方議会議員の女性比率は一番高いところで都議会が29%ですが、全体的には数%。 国会でも地方議会でも、「女性のいない民主主義」なのです。

 「政治分野の男女共同参画推進法」が国政選挙での女性の候補者割合を増やすよう各政党に努力を義務づけますが、強制力がないため、とりわけ政権与党の自民、公明の女性候補割合は低いままです。世界では130カ国以上がクオーター制(一定割合を女性に割り当てる)を導入。フランスでは2000年にパリテ法(男女同一割合制)が出来てから女性議員がぐんと増えました。国が先頭に立つべきなのです。

(2)あらゆる政治分野、政策に女性の参加を増やし、ジェンダー視点でとりくむことが大切です。災害対策、コロナ対策、気候危機対策、等々です。 

平和の構築のためにもジェンダー平等は不可欠 

 2017年に国連で採択された核兵器禁止条約では「女性および男性の双方による、平等で十分かつ効果的な参加が、持続可能な平和と安全の促進と達成のための不可欠な要素であることを認識し、女性の核軍縮への効果的な参加を支援し強化することを約束」すべきとしています。

 育児は男女ともの役割と責任ですが、「生命を産みだす出産」については女性に限られます。だからこそ女性は平和を望みます。私はそれを女性的価値観と言ってきましたが、今日では憲法的価値観であると思います。戦争は敵も味方もありません。兵士も民間人もありません。命をおろそかにします。殺人が正当化されます。こういうことを許してはなりません。その意味でもジェンダー平等は憲法的価値観を広げることによって達成されます。憲法を生活に定着させ、活かすことはジェンダー平等を広げることでもあると強調して、発言を終わります。

2020年10月30日金曜日

 今こそ、少人数学級の実現を 

東京革新懇代表世話人、都教組委員長 木下雅英

子どものいのちと学びの保障に

 新型コロナウイルス感染症拡大防止の緊急事態宣言が解除され、ほとんどの学校で6月から数週間、分散登校が行われました。子どもも教職員も20人以下学級の良さを実感しました。子どもたちからは、「発言の回数が増えた」「先生がよく見てくれた」「授業がよくわかった」、教職員からは、「子ども一人ひとりをよく見ることができた」「ゆとりをもって対応できた」などの声があがりました。不登校や不登校気味だった子どもが登校できたり、情緒を乱してしまいがちな子どもが落ち着いて授業に参加したりすることができました。 

しかし、40人学級に戻ってからは、元の木阿弥に。40人学級では子どもと子どもの間隔を広く取ることは不可能です。感染症対策を徹底しようにも、教室内外の水道施設は最小限で行列ができ、給食の配膳・片付けも、コロナ禍以前にも増して時間がかかります。

もう40年以上の長きにわたって40人学級のままです。民主党政権で小1が35人学級、小2が予算上の加配教員を活用して35人学級が可能になりました。都独自には中1のみ35人学級が可能になっただけです。OECD加盟諸国で、国民総生産に占める日本の教育予算の割合は最低ラインです。安倍前首相も少人数学級の良さは認めたものの、学級の人数を決める標準法改定はしていません。都は「切磋琢磨」するには40人学級が必要、少人数学級は国がやるべきこと、習熟度別授業で学力が伸びた、教室が足りないなどとして、少人数「学級」には後ろ向きな姿勢をとり続けています。コロナ禍の今こそ、子どものいのちと学びを保障するために、少人数学級に踏み出すときです。 

子どもたちの願いとこれからの教育・学校 

 教職員が、そうならないように努力はしているものの、学習指導要領、標準授業時数の縛りから、子どもたちは今、コロナ禍以前にも増して、詰め込み・スピード授業を強いられています。また、学校には欠かせない様々な行事が削られている中、子どもたちは、わかりやすく楽しい授業、そして居場所としての希望ある学校を願っています。それには一刻も早い少人数学級の実現と教職員増が欠かせません。これまでの運動で、ようやく政府も少人数学級実現には前向きになっています。さらなる運動の強化が必要です。

また、教室が足りないというのであれば、効率優先の学校統廃合も中止すべきです。学校は地域の宝、文化の拠点です。臨時的であっても、校庭にプレハブや大きなテントを建てることも検討する必要があるのではないでしょうか。

さらに、経済競争の「人材」として子どもたちを育て、競争と格差、自己責任を子ども、保護者に押しつけ、公教育を壊してきた「教育再生」やトップダウンの「教育改革」競争をストップし、憲法、1947教育基本法の理念、子どもの権利条約を生かした教育、学校をとりもどすことが必要です。ICT・AI教育、そして教育の市場化を、コロナ禍に乗じて推進しようとする動きにも注意を払わなくてはなりません。子どもたちの実態や願い、地域の状況に応じて、各学校で教育課程をつくり、人格の完成をめざして公教育をすすめ、行政はそのための条件整備を徹底して行っていく、こうした教育行政、学校に変えていくことが急務です。併せて、憲法に基づいて、教育の完全無償化を実現し、どの子も分け隔て無く学べ、成長できる環境を保障することが必要ではないでしょうか。

 「1年単位の変形労働時間制」ではなく「少人数学級」を

教職員は現在、コロナ禍以前にも増して、長時間過密労働を強いられ、限界に達しています。体調を崩したり、メンタル不全になったりして休む教職員も少なくありません。管理職や同僚によるパワー・ハラスメントも増えており、学校再開後、都教組への相談が急増しています。

それにもかかわらず、国や都が公立学校に「1年単位の変形労働時間制」の導入をねらっています。これは長時間過密労働を固定化、助長するもので子どもと教育にも大きな影響を及ぼします。また、安上がりの働き方をひろげようとする政権のねらいから、全労働者の問題でもあります。長時間労働改善には教職員増と具体的業務の削減が欠かせません。都段階での条例提案阻止、地区段階での規則改定阻止のために、「『変形』よりも『少人数学級を』」の世論を大きくひろげていく必要があります。「ゆきとどいた教育を求める全都全国署名」や「変形」ではなく「少人数学級」を求める都民署名、団体署名へのご協力をお願いします。

 

2020年7月22日水曜日


コロナ危機、都知事選、そして総選挙のゆくえ

明治学院大学国際平和研究所研究員
   (政治社会学)   木下ちがや 
 
 1、 コロナ危機がもたらした「危険」と「機会」
  第二次大戦以後最大の危機といわれる新型コロナウィルスの感染爆発は、いまだ解決策のみえない状態が続いています。いまのわたしたちは、これまでの経済危機や震災に比べてもより深い危機の奔流に巻き込まれています。
感染爆発の危機の下では、わたしたちの社会を構成する職場、学校、消費空間から避難することを迫られています。さらに今回の危機は、民主主義的な連帯の習慣を封じ込めてしまいました。人と間近に言葉を交わすことは禁じられ、「年越し派遣村」や「国会前デモ」のような、集団的な救済と意思表明の手段が封じ込められてしまいました。
前例のない世界的な経済危機と民主主義的手段の凍結の下で、失業、経済格差の広がり、ポピュリズムやナショナリズムが台頭するという不吉な予告もなされています。
21世紀に入ってから、すでに新自由主義的グローバリズムが世界を覆い、経済格差の激化と排外主義的の台頭はすでにはじまっていました。2016年のトランプ政権の登場がまさにその兆候であり、新型コロナ危機は、すでに生じていた政治的、社会的、経済的危機を一気に加速しようとしています。
ここ十数年にわたり席巻してきた新自由主義改革の下で、保健所の削減、病院の統廃合をすすめられてきました。その結果、公衆衛生体制の疲弊が新型コロナ対策を阻んでいます。ほんの少しの感染者の増大が、あっという間に医療崩壊を招くほどに、医療体制は「改革」により疲弊しきっていました。アベノミクスのもと、日本経済は安定しているといわれ、女性の活躍が謳われ、就職率も高く、失業率も低いと喧伝されてきました。しかしそれが薄氷の上の安定だったことを、新型コロナ危機はさらけだしたのです。
では、社会的隔離のさなかにあり、デモも集会も開けないわたしたちはいま無力でしょうか。
新型コロナ危機以後、安倍一強のもとで生まれていた無力感は徐々に失われつつあることも事実です。国民に対する一律10万円の支給の要求を、当初政府は一顧だにしませんでした。ところがSNSを中心にこれまでにない要求の声が渦巻き、総理大臣がいったん決めた予算を組み替えるという前代未聞のかたちで実現されました。新自由主義改革によって疲弊させられてきた「医療を守れ」という声は圧倒的です。小さな学生団体がはじめた「学費の減額を」という声は一挙に広がり、安倍総理は「前向きに検討する」といわざるを得なくなってきています。朝日新聞の世論調査によると、「大きな政府」を求める声は民主党が政権交代を果たした時期に匹敵するレベルに高まっています(1)。そして、安倍政権が、検察の追求を逃れるために子飼いの黒川検事正の検事総長就任を強行しようとしたのに対して、ネット上で「#検察庁法案に抗議します」のムーブメントが大規模に巻き起こり、野党の奮闘で同法案の強行採決は阻止され、黒川氏は辞任に追い込まれました。一強といわれた安倍政権の仕掛けが、この間渦巻く世論の力で次々と挫折しているのです。海外に目を向ければ、世界中で人種差別に抗議するデモが広がり、11月に大統領選挙を迎える米国ではトランプ大統領が落選の瀬戸際に追い込まれています。

このように、新型コロナ危機の下では、社会をよりよい方向に変えようとする力もうまれているのです。わたしたちはいま、民主主義を破壊する危険な力と、民主主義的な機会を開こうとする力とのせめぎあいのさなかにいます。
では、このような新型コロナ危機の下での新しい状況が、わが国の政治、そして野党共闘にどのような影響を与え、どのような課題を提示しているのでしょうか。東京都知事選は、新型コロナ危機発生以後の民意を問う初の大規模選挙となりました。

2、 東京都知事選をどのように評価するか―野党共闘の進化

 小池百合子336万票、宇都宮けんじ84万票、山本太郎65万票、小野たいすけ61万票-これが今回の東京都知事選の得票結果でした。確かに、小池百合子はダントツに圧勝しましたし、宇都宮けんじは過去二回出馬した際の得票にすら届きませんでした。しかしながら、この選挙戦で野党は、得票数だけでは図れない中・長期的な展望を切り開くたたかいをやり遂げました。この選挙は共産党系候補を全野党が応援し善戦した2019年の高知県知事選の成果を引き継ぎ、野党共闘を進化させるたたかいだったのです。
 まず、小池百合子氏はなぜ圧勝したのでしょうか。知事は現職2期目が強いことを踏まえたうえで、その理由のひとつは、新型コロナ危機への対処をめぐり、安倍政権の信頼度が著しく低下する一方、全国の知事への評価があがっていたことがあげられます。小池氏は自民党の推薦を(表面上)断り、安倍政権批判の波をかぶるのを巧みに回避しました。「非自民」「非政権」のイメージづくりにより、政権に批判的な立憲民主党の支持層をも取り込むことに成功したのです。
 もうひとつは、「女性知事」であること。この間、世論のなかでは女性政治家を待望する機運がひろがっています。metoo運動をはじめ、女性の権利を掲げる運動が活発化しています。ところが、今回の都知事選、主要候補は小池氏以外みな男性でした。さらには小池氏の容姿などへのバッシングは、多くの女性の反感を買っていました。都知事選で電話かけをした方によると「狸だ厚化粧だ女帝だと、揶揄すればするほど、百合子になびいてた感じ」があったそうです。わたしたちの側に、政治参加を阻まれてきた女性たちの想いに至らない部分があったのではないでしょうか。
 そもそも、首都東京にもかかわらず、歴代の革新勢力の都知事候補はすべて男性でした。今回の都知事選は、革新側はこれまで以上に女性政治家を育て、押し上げていく環境をきちんとつくるという今後の課題をつきつけた選挙でもあったのです。
 次に野党側です。立憲、共産、社民そして国民民主の幹部らは宇都宮けんじを支援し、れいわ新選組は山本太郎を公認するという、世間からみれば野党分裂選挙になりました。
しかし、宇都宮陣営で闘った人たちからは、得票以上に「すっきりと闘えた」という声が多くでています。都知事選、都議補選において、野党がこれまでにない結束と連帯感を強めました。わたしたちが今回の都知事選からくみ取るべき最大の教訓は「どんなに劣勢でも、決して陣形を崩さないで全力で闘う」ということです。昨年来、野党共闘を破壊しようとする策謀は、政権与党のみならず全方位的に仕掛けられてきました。しかしそれに屈することなく、各野党とその支持者は宇都宮陣営に全力で結集し、たたかい抜きました。この陣形を守り抜いたことこそが、今回の都知事選の最大の成果です。そして都知事選直後から、立憲、国民、社民党の合流と新党結成の流れが加速しています。これは17年の共産党・リベラル排除の「希望の党」とは逆に、共産党との連携を前提としたリベラルな新党です。都知事選において、山本太郎の出馬はれいわ新選組の孤立と衰退に結果しました。それに対して宇都宮けんじの出馬は、今後につながる野党共闘の進化をもたらしたのです。

3、 総選挙へ―新しい社会構想を掲げて

 周知のとおり安倍政権の支持率は急落し、レームダック状態に陥っています。しかし今の自民党には後継総理を据える力はなく、惰性で政権が続いています。しかも、黒川検事正の検事総長就任に失敗したことで、河井夫妻の公職選挙法違反事件が安倍総理周辺に及ぶリスクがあり、退陣できない事態に陥っています。202110月の任期満了までに安倍総理の下で解散総選挙を打つことは確実な状況であり、追い込まれることを避けるために今年秋に解散を打つ可能性が高まっています。
 安倍政権が勝利するためのゆいいつの条件は「野党分断」です。維新の会、れいわ新選組が「元気」なうちに、かれらを乱立させ野党を沈めるという戦略です。それに対抗するためには、野党の結集を早急にすすめ、候補者一本化に全力を注ぐことが必要となります。
 そして野党は、批判だけではなく社会構想を示す必要があります。529日、立憲民主党枝野代表は「支えあう社会へ―ポストコロナ社会と政治のあり方(命と暮らしを守る政治構想)という私案を発表しました(2)。新自由主義批判、自己責任論批判、リベラルで社会主義的な理念を強く打ち出したこの構想は、現在、共産党を含め野党全体の構想に練り上げられようとしています。
 新型コロナ危機の下、新自由主義的な弱肉強食の改革願望は消え去りました。 いまあるのは、ごく普通の暮らし、ごく普通の学び、ごく普通の健康を守りたいという、ささやかですが困難な要求です。 野党は気張る必要はなく、こうしたささやかな要求をしっかりと受け止める社会像を提示していくことが求められています。アメリカでは大統領選を控え、民主党大統領候補のバイデンと、左派の候補者であったバーニーサンダースが政策協定を結びました。中道派のバイデンは、気候変動対策などの左派の提案をうけいれ「アメリカ版野党共闘」で選挙戦は闘われようとしています。かつて日米の民主党は、新自由主義政策に傾いていました。しかしいまは、反新自由主義的なコンセンサスに基づく政治を打ち出そうとしています。このように、革新勢力の政策と運動は、これまで以上に大きな舞台で前進する可能性が広がっているのです。
野党はたんに選挙区を一本化するだけではなく、共通の理念のもとに安倍政権と対峙していく段階にまできました。来るべき総選挙は、コロナ危機以後の社会構想をめぐる闘いになります。この闘いをより充実させるために、いま、なにをなすべきかが問われているのです。

(1)朝日新聞20425日 https://www.asahi.com/articles/DA3S14455198.html


2020年5月4日月曜日

ウイルスの脅威と「国際連帯」で闘おう!
新堰 義昭(東京革新懇・三多摩革新懇代表世話人) 
2020年を「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」
中国・武漢発の「新型」コロナウイルス(COVID19)が瞬く間に蔓延して、全世界で「猖獗(しょうけつ)」を極めている。電機製品や自動車の「新型」とは違い、ウイルスの「新型」とは、菌の特性が分からずワクチン・治療薬もない、未知の手に負えない病気であるということ。あえて「猖獗」を使ったのは、「はげしくあばれまわっていて、おさえることのできないさま」の意味が、現状にぴったりだからである。
皮肉にも今年は、「2020東京五輪・パラリンピック」ではなく、コロナ禍による大惨事が起きた年として、歴史に記録されるであろう。しかも感染者数、死亡者数は進行形で、収束は年を越えるかもしれない。「自粛」はいつまで続くのか、医療崩壊は起きないか、自分や家族が感染しないか、家計・営業がもつか、不安は膨らむばかりである。
しかし国民が主人公の社会を願う私たちは、うろたえ絶望しているわけにはいかない。作家・井上ひさし氏は「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」との言葉を残している

日本の対応が遅れ混迷しているのは何故か
 理由の第一は、安倍政権が「命より五輪」を優先したからである。北海道知事が独自で「緊急事態宣言」を出したのは228日、厚労省専門家会議クラスター班の推計に基づいており、遅くともその時に、首都圏に「緊急事態宣言」を発令すべきであった。IOCが東京五輪中止の判断をすることを国・都は恐れ、PCR検査を怠り感染の広がりを隠したのだ。また中国の習近平国家主席を4月に国賓として招く外交日程があり、中国からの渡航者制限が遅れたことも悪影響を与えた。
第二は、「行革」路線による、保健所の統廃合はじめ公的医療水準のレベルダウンである。三多摩地域2631村に保健所は都立5か所、市立2か所しかない。検査体制が不十分で、病院の医療器材が絶対的に不足している。「防護マスク」を手作りで行っているニュースに怒りをこえて情けなくなった。そして過去にMERS,SARS感染で苦闘した韓国、台湾、中国などの経験から学なかった、ここにも韓国、中国への蔑視があるのであろうか。
第三に、非常時には指導者への国民の信頼が何よりも重要、自由や権利を制約する方針を受け入れてもらう必要があるからである。この間の、「森友」「加計」「桜」「検察」など「噓」「隠ぺい」「改ざん」「強権」の悪政が続き、安倍首相から民心が離れ嫌悪感さえ抱いていることが重大である。官邸側近の独断、ノンキャリアの「しっぽ切り」、「お友だち」優遇人事が重なり、政策判断が迷走し行政機関の士気も低下しているのではないか。

軍事力は、ウイルス菌に無力である
大学の卒業式式辞では、コロナ感染に触れて「人類は感染症に国境がないことを思い知らされた」(慶応義塾大学長谷山塾長)、「(今後の危機への対策について)国際協調を通して解決していくことが不可欠」(東北大学大野総長)と述べられた。その通りである。
今、米国や中国など軍事大国は核兵器禁止条約に背を向け、莫大な軍事予算を使い宇宙にまで軍事力の覇を競っている。米国に追随する安倍政権は、トランプ大統領に言われるままに、高額兵器を“爆買い”している。一方で休業の補償となると、財政難を理由に渋る。
しかし、米軍や仏軍の原子力空母でコロナ感染者が増え、軍事行動が不能となっている。横田基地には、感染した米兵が運び込まれている。安保法制下の日本の検疫体制には大きな穴が開いているのである。自衛隊の訓練も中止となった。
ウイルス菌は「新型」を次々と出現させ、人類社会の「グローバル化」の波に乗り攻撃を繰り広げている。歴史学者ハラリ氏は、人類は「他国と争い、情報の共有を拒み、貴重な資源を奪い合う」余裕はないはずで、「国際的な連帯で危機を乗り切るという選択肢」(「朝日」415日)を提示している。世界の軍事費は約190兆円、2020年のコロナ禍を契機に、「軍事費よりも医療・福祉に予算を」「持続可能な社会へ」と転換するチャンスではないだろうか。

誰が感染してもおかしくない状況。手洗いの励行、行動における細心の注意、免疫力の向上でコロナ禍を乗り切ろう。「生き延びよ」そして、「闘おう!」

三多摩革新懇ニュース

2020年4月23日木曜日


いのちを守る最前線の医療機関を守るために
西坂昌美東京民主医療機関連合会事務局次長          
感染拡大の中で医療機関での院内感染の発生
 47日、安倍首相が「改定新型インフルエンザ等特措法」に基づく緊急事態を宣言、3日後に小池都知事が業種を指定して自粛を要請。しかし感染拡大は止まらず419日時点で感染者数は全国1219人、東京3082人です。
 「非常に検査数が少ないので表れている数字は氷山の一角」「検査をしなかったことで市中感染と院内感染が広がり、そこから医療崩壊が起こっている」とWHO上級顧問の渋谷健司氏は厳しく指摘します(「AERA418 日付等)。なお、324日の東京革新懇代表世話人会「新型コロナウイルス感染症にかかわる対策と人権規制をどう考えるべきか」では「検査の抑制は、感染の実態をつかめないまま感染拡大をまねき、また、感染対応の長期化をもたらす恐れがある」と指摘しました。正確な感染者数を把握できない政府の対策には科学性が欠けています。公表データをもとにしても、このまま指数関数的な増加がつつけば425日に全国で感染者が2万人近く、東京で5千人を超える予測です。こうしたもとで院内感染が発生しています。都内では永寿総合病院(163人)、中野江古田病院(97人)で大規模院内感染。そこに至らなくても外来・救急の休止、入院の制限をせざるを得ない病院が散発しています。最も避けたい院内感染がどこでも起こる可能性があり、いのちを守る最前線の医療機関は今、大きな危機に晒されています。

医療機関の判断でPCR検査をできるようにすることは現場の切実な要求
 新型コロナウイルスは無症状の場合もあり、感染の把握と対応が遅れ院内感染を防ぎきれていません。もともと少ない職員数で疲弊しているところにマスク等の物資が不足。更に、「保健所を通さなければPCR検査ができない」ことが各病院での感染の有無の診断を困難にしています。しかも検査を保健所に依頼しても保健所機能がパンク状態で結果が出るまでに1週間近く要することもあります。その間は「身動き」が取れず、患者と接触した職員の自宅待機で体制も脆弱になってしまいます。職員から感染者が出た場合には、外来・救急休止や入院制限など状況は更に悪化。このような事情で、一般の医療機関では発熱した患者を容易に受け入れられず、一方、保健所や発熱外来・感染症指定医療機関への患者の集中が起きています。一刻も早く、医療機関の判断でPCR検査ができるようにと現場から切実な要求が出されています。

検査の拡充とともに医療機関の役割分担を
 検査体制を強化し医療機関の判断で必要な検査が行えるよう条件を整えつつ、二次保健医療圏単位もしくは区単位で医療機関の役割分担を図ることが求められています。新宿区では、医師会・保健所・医療機関が連携して医療提供体制の構築を進めています(415日新宿区記者会見)。ポイントは、医師会と各病院からのスタッフ派遣で検査スポットを設置して全てが保健所に集中する流れを変えること、重症・軽~中等度症を受け持つ病院を分けることにあります。それを行うために医療機関への財政支援が必要です。都は補正予算案(417日開会の都議会に提案)で空床確保料の補助、杉並区では補正予算案(413日発表)で感染者を診療する区内4つの基幹病院の減収補填をすすめます。
 
いのちと健康を守る責任は国と自治体に
 今、全力で医療機関を守ることが必要です。安倍政権は2013年度から社会保障費の自然増圧縮を続け、病床削減のための再編統合をすすめ診療報酬ではマイナス改定を繰り返してきました。その結果、もともと少ない医師・看護師等に過酷な労働が強いられ、医療経営は悪化し、地域医療は崩壊寸前にありました。そうした中にあっても医療機関は新コロナウイルス感染症に立ち向かっています。今こそ、憲法に基づく人権としての社会保障に大きく舵を切り、医療提供体制や保健所の充実を図る時です。
 また、都立病院(公社立含む)4病院は最初にコロナウイルス陽性患者の入院受け入れを行いました。しかし、小池百合子都知事は都立病院の地方独立法人化をすすめています。独法化方針を撤回させ、「都立」のままで行政的医療(感染症・災害医療や周産期医療等)を充実させることが必要です。現在、帰国者・接触者相談センターなど重要な役割を担っている保健所は、負担過重で疲弊状態にあります。憲法25条の「公衆衛生の向上及び増進」のために設置されている保健所は、1994年の地域保健法により全国845から472か所(2019年)に減らされ、現在、都内の保健所は23区に各1か所、市町村は広域統合で8か所の31か所です。保健所を減らしてきた政策も見直すべき時です。

2019年5月2日木曜日

「希望の政治」をめざし参院選に向けて「本気の共闘」を
 東京革新懇代表世話人・法大学名誉教授 五十嵐 仁

 統一地方選挙と衆院補選の結果が明らかになりました。天皇の代替わりを控えた新元号「令和」の発表と、それに伴う「改元フィーバー」という一種の「お祭り騒ぎ」によって天皇制イデオロギーの浸透と定着が図られるなかでの選挙でした。
 このような社会的雰囲気は安倍首相にとって有利に働き、内閣支持率が高まる下での厳しい選挙になりました。また、定数削減や立候補者の減少による当選ラインの上昇など条件の変化もありました。
このような状況のもとで、日本共産党は地方議員の議席を後退させたものの、2017年総選挙の比例得票率より前進し、反転への足がかかりを築いたと言えます。

衆院補選で自民党2連敗

夏の参院選の前哨戦として注目されたのが衆院沖縄3区と大阪12区の補欠選挙でした。辺野古新基地建設の是非を争点とした沖縄3区では野党が支援する屋良朝博候補が圧勝、大阪12区では日本維新の会の新人候補が当選し、自民党は2連敗しました。第2次安倍政権発足以降、自民党が衆参の補選で敗北したのは初めてです。
 この背景には、長期政権の驕り、塚田一郎副国交相の「忖度発言」や桜田義孝五輪担当相による復興軽視の暴言などへの批判がありました。「安倍一強」体制の綻びが生じたということでしょうか。
 自民党候補が正面から辺野古容認を掲げて敗れた沖縄3区補選の結果は、「基地建設ノー」の最終的な審判になりました。選挙態勢として「オール沖縄」が果たした役割も大きなものでした。市民と野党との共闘の源流である沖縄で、その効果と真価が発揮されたということができます。
 他方で、大阪では残念な結果に終わりました。しかし、議員生命を投げ打って安倍政権に対抗する選択肢をつくり出した宮本たけし候補の決断と勇気は高く評価されます。
自由・社民・立憲・国民の党首をはじめ6野党・会派から多くの国会議員、文化人や知識人、1000人をこすボランティアが応援・激励に駆け付けました。無所属とはいえ共産党議員だった候補を野党の党首や議員が応援したのは初めてのことです。
最終盤には安倍首相と麻生副総理が自民党候補の応援に入り、「安倍官邸VS.野党共闘」という構図になりました。宮本さんが立候補しなければこのような対立構図が明確になることはなかったでしょう。全国に勇気を与え、野党共闘の発展にとって大きな財産を残しました。
ただし、沖縄では「本気の共闘」が実現しましたが、大阪では立憲民主党と国民民主党は自主投票で推薦には至りませんでした。「本気度」に大きな違いがあったことは否めません。

消費増税阻止へ「本気の共闘」を

 選挙戦の最終盤、萩生田光一自民党幹事長代行が消費増税を延期して信を問う可能性に言及し、憲法審査会についても「少しワイルドな憲法審査を自民党は進めていかなければいけない」と語りました。個人の意見だとしていますが、安倍首相の意向を反映したものであることは明らかです。野党に解散をちらつかせて憲法審議への参加を迫る脅しではないでしょうか。
 一般消費税や売上税の導入を共産党の躍進と自民党の大敗によって挫折させた経験があります。選挙の結果次第では、安倍政権を追い込んで消費増税を中止させられることは歴史が証明しています。
天皇代替わりの政治利用を許さず、「ワイルド」な改憲キャンペーンやダブル選挙にも備え、参院選1人区での野党統一候補の擁立を加速しなければなりません。衆院補選の教訓を学び、明確な対立軸を掲げ、政策合意を進めて相互推薦・相互支援という「本気の共闘」を早急に確立する必要があります。
選挙中の論戦や衆院補選2連敗、景気の悪化と消費税10%増税への批判の高まりなどによって自民党内での動揺が生まれました。このチャンスを生かして攻勢に転じ、「希望の政治」の扉を開くことが、これからの課題です。