新堰 義昭(東京革新懇・三多摩革新懇代表世話人)
2020年を「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」
中国・武漢発の「新型」コロナウイルス(COVID―19)が瞬く間に蔓延して、全世界で「猖獗(しょうけつ)」を極めている。電機製品や自動車の「新型」とは違い、ウイルスの「新型」とは、菌の特性が分からずワクチン・治療薬もない、未知の手に負えない病気であるということ。あえて「猖獗」を使ったのは、「はげしくあばれまわっていて、おさえることのできないさま」の意味が、現状にぴったりだからである。
皮肉にも今年は、「2020東京五輪・パラリンピック」ではなく、コロナ禍による大惨事が起きた年として、歴史に記録されるであろう。しかも感染者数、死亡者数は進行形で、収束は年を越えるかもしれない。「自粛」はいつまで続くのか、医療崩壊は起きないか、自分や家族が感染しないか、家計・営業がもつか、不安は膨らむばかりである。
しかし国民が主人公の社会を願う私たちは、うろたえ絶望しているわけにはいかない。作家・井上ひさし氏は「記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ」との言葉を残している
日本の対応が遅れ混迷しているのは何故か
理由の第一は、安倍政権が「命より五輪」を優先したからである。北海道知事が独自で「緊急事態宣言」を出したのは2月28日、厚労省専門家会議クラスター班の推計に基づいており、遅くともその時に、首都圏に「緊急事態宣言」を発令すべきであった。IOCが東京五輪中止の判断をすることを国・都は恐れ、PCR検査を怠り感染の広がりを隠したのだ。また中国の習近平国家主席を4月に国賓として招く外交日程があり、中国からの渡航者制限が遅れたことも悪影響を与えた。
第二は、「行革」路線による、保健所の統廃合はじめ公的医療水準のレベルダウンである。三多摩地域26市3町1村に保健所は都立5か所、市立2か所しかない。検査体制が不十分で、病院の医療器材が絶対的に不足している。「防護マスク」を手作りで行っているニュースに怒りをこえて情けなくなった。そして過去にMERS,SARS感染で苦闘した韓国、台湾、中国などの経験から学なかった、ここにも韓国、中国への蔑視があるのであろうか。
第三に、非常時には指導者への国民の信頼が何よりも重要、自由や権利を制約する方針を受け入れてもらう必要があるからである。この間の、「森友」「加計」「桜」「検察」など「噓」「隠ぺい」「改ざん」「強権」の悪政が続き、安倍首相から民心が離れ嫌悪感さえ抱いていることが重大である。官邸側近の独断、ノンキャリアの「しっぽ切り」、「お友だち」優遇人事が重なり、政策判断が迷走し行政機関の士気も低下しているのではないか。
軍事力は、ウイルス菌に無力である
大学の卒業式式辞では、コロナ感染に触れて「人類は感染症に国境がないことを思い知らされた」(慶応義塾大学長谷山塾長)、「(今後の危機への対策について)国際協調を通して解決していくことが不可欠」(東北大学大野総長)と述べられた。その通りである。
今、米国や中国など軍事大国は核兵器禁止条約に背を向け、莫大な軍事予算を使い宇宙にまで軍事力の覇を競っている。米国に追随する安倍政権は、トランプ大統領に言われるままに、高額兵器を“爆買い”している。一方で休業の補償となると、財政難を理由に渋る。
しかし、米軍や仏軍の原子力空母でコロナ感染者が増え、軍事行動が不能となっている。横田基地には、感染した米兵が運び込まれている。安保法制下の日本の検疫体制には大きな穴が開いているのである。自衛隊の訓練も中止となった。
ウイルス菌は「新型」を次々と出現させ、人類社会の「グローバル化」の波に乗り攻撃を繰り広げている。歴史学者ハラリ氏は、人類は「他国と争い、情報の共有を拒み、貴重な資源を奪い合う」余裕はないはずで、「国際的な連帯で危機を乗り切るという選択肢」(「朝日」4月15日)を提示している。世界の軍事費は約190兆円、2020年のコロナ禍を契機に、「軍事費よりも医療・福祉に予算を」「持続可能な社会へ」と転換するチャンスではないだろうか。
誰が感染してもおかしくない状況。手洗いの励行、行動における細心の注意、免疫力の向上でコロナ禍を乗り切ろう。「生き延びよ」そして、「闘おう!」
三多摩革新懇ニュース
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