2012年4月27日金曜日

 「貧困と格差」のない社会をめざして
  福祉国家型の生活保障システムを
             都留文科大学教授 後藤道夫
 
 民主党政権が構造改革の急進的再開に踏み込んだ今、それに立ち向かう福祉国家型生活保障の原則を広く議論し、社会危機からの脱出の方向を明ら かにする必要があろう。
 
昨年秋に出た「社会保障基本法・社会保障憲章二〇一一」のエッセンスを紹介しながら議論に参加したい。
 福祉国家型の生活保障は、以下の四つの施策領域の有機的な組み合わせを骨格として構想される。
 ①労働権保障、②居住の権利の保障、③基礎的社会サービスの公的責任による現物給付、④重層的で空隙のない所得保障。
 
このうち、②と③は生活の土台・基礎的環境にかかわるものだ。所得保障をするから、後はそのカネで何とかしろ、というのではなく、所得保障と別立てで保障 する。
労働権の保障
 
①は、適職・かつ生活可能な職で働く権利の保障である。その大前提は、労働者本人分の生活費を賄える賃金水準、および、失業時の生活保障である。この二つ とも、日本では実現していない。
 日本の失業者はその5人に1人しか失業時保障を受けていない。こうした状態だと、失業者は悪条件の職にも就かざるを得ないため、労働条件の 全般的低下が生ずる。これは90年代末以来の非正規急増、賃金大幅低下、長労働時間の蔓延を可能にした大きな要因である。
 雇用保険の抜本改善と「失業扶助制度」創設が急がれなければならない。これは④の一部でもある。
最低生活費の1.5
  失業時・傷病時の所得保障が最低生活費を下回るのはおかしい。そうだとすれば、傷病手当は従前賃金の67%だから、フルタイム最低賃金月額は生活保護制度 による単身者最低生活費の1.5倍をこえる必要がある。日本の現状はこれとほど遠い。
 「賃金額、社会保険給付額、生活保護の給付額」という順番が、日本では実現しておらず、賃金額と単身者の生活保護給付額すら容易に逆転す る。これでは所得保障のまともな設計はできない。低賃金は社会保障の不倶戴天の敵なのである。
所得保障の原則
 勤労の条件がある人には労働権を保障し、勤労を期待されない人びと(子ども・高齢者・障がい者など)の基礎的生活費については、社会がこれ を本人に保障すべきである。
 子ども手当はすべての子どもに支給されるべきだ。これは社会が負担する子どもの基礎的養育費だから、その額は生活保護給付の子ども一人分で よい。親が負担すべきだという人は、フルタイム最低賃金額を、子どもを含む人数分の生活費の1.5倍と主張すべきだろう。
公的責任で現物給付
 基礎的社会サービス(保育、学校教育、医療、介護、障害者福祉サービス、職業訓練等)は、必要が生じた時には受けないと生活が大きく損なわ れる。サービスを確実に給付するには、必要が生じた人に無条件で、サービスの現物給付を公的責任で行えばよい。
 商品としてのサービスをカネを払って買うシステムでは、必要が充足できない人びとが多数生まれる。介護保険をみれば明らかであろう。
 
肝心なことは、基礎的社会サービスの給付と財源確保とを切り離すことである。財源は一括して、別に、応能負担の税や社会保険料で集めればよい。
福祉国家型財政と賃金上昇で経済低迷から脱出
 日本企業がEU諸国なみに社会保険料を払うと、わが国の社会保障財政は26兆円ほど豊かになる。所得税を総合・累進課税の原則に戻し、法人 税への優遇税制をあらため、富裕税をつくる。賃金上昇と社会保障による国内消費活性化は、長期経済低迷を打開するだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿