2011年9月6日火曜日

「貧困と格差」のない社会をめざして③

人生を豊かにする演劇と「格差」
~ 創る者も観る者も、人間らしく生きる「水」を求めている ~
葛西和雄(青年劇場俳優、渋谷革新懇)
俳優は貧しいと覚悟していましたが
私が俳優を志したとき、収入や貧困とかまるで考えていませんでした。というより、仕事に就いて暮らしていけない状況がある―とは、考えもしませんでした。貧しいだろうなあ…とは覚悟していましたが。実際、演劇人は経財的に豊かではありません。先輩から美濃部都政時代に都営住宅に入居できたのでやってこられたという話を聞きました。お金持ちでなくてよいから、子どもの養育や住居、健康、老後の心配なくじっくりと演劇づくりに取り組める環境があれば、多少貧しくても頑張れる、とみんな思っています。

貧困で演劇鑑賞をあきらめる人も
劇団に入り、自立した演劇づくりには多額のお金がかかること、観客に支えられること、なにより多くの人に責任を持って演劇を届けること、演劇の職業化をめざす必要を教えられました。みんなで、一人でも多く観客になってもらえるようにと、人とのつながりを求めてきました。
しかし今、「貧しさ」の代表格の演劇人が威張れないほどワーキングプア―が激増し、貧困といわずとも、支出節減でやむなく演劇鑑賞を減らしたりあきらめる人も増えています。

芸術鑑賞回数は、国民の豊かさ指数
もちろん「生きがい」として観続けてくださる方々に、大いに励まされています。
生の舞台芸術鑑賞体験回数はその国の国民生活の豊かさを図る指標の一つと考えます。日本では、圧倒的多数の国民がその体験をできずにいるのでは。たとえば公務員の皆さん。「公務員バッシング」や人員・財政削減が進み、時間・経済・意欲的に余裕を失っていませんか。私たちは学校での鑑賞教室にも取り組んでいます。生徒たちに生の演劇鑑賞体験をさせたいと考える先生は大勢いますが、ではその先生はどれだけ演劇に触れているでしょう。教師を目指す青年はどうでしょう。

国は文化予算を増やせ
今必要なのは、そうした体験を可能にしてこその豊かさであり、それは国や自治体、企業が、税金の使い方を変え人間らしい生活を保障することに責任を果たすことで実現できると思います。昨年芸団協(正式名称「芸能実演家団体協議会」、会長は野村萬。)は全国規模で「文化予算を国家予算の0・11%から、0・5%に」増やすことを求め請願署名を集めました。これは芸能実演家たちの悲鳴であり叫びであることを、国や政治家は理解すべきです。今、創る者も鑑賞する方も社会も、深いところで人間らしく生きる「水」を求めています。

新作「普天間」を、青年たちに観てもらいたい
 今私は、青年劇場の新作「普天間」の稽古中です。沖縄が背負わされている苦悩を舞台から伝え、多くの人と考えたい。特に悪政に痛めつけられている青年たちにぜひ観てもらいたい。先輩の皆さんから声をかけ後押しいただきたいです。福島の原発事故や震災復興など将来不安だらけの中ですが、たとえひと時でも劇場で肩寄せ合いひと時を共有することが、次への活力を生むと確信します。
      http://www.seinengekijo.co.jp/frame.html


青年劇場104回公演》
他人に痛めつけられても眠ることはできるが
他人を痛めつけては眠ることができない
 普天間
   坂手洋二=作 藤井ごう=演出

   91019日 紀伊国屋ホール
   921日 府中の森芸術劇場ホール
                   926日 かめありリリホール
                                   チケット℡0333527200

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