「参議院選挙の結果と今後の政局」
=東京革新懇;世話人会・代表者会議の記念講演=
早野透さん(元朝日新聞編集委員)
腑に落ちない選挙結果
今回の参議院選挙は、総じて、腑に落ちない結果であった。多くの国民は、鳩山政権も困ったものであるが、自民党にも任せられない、という気持ちだったのではないか。しかし、当選者数は、民主党44議席、自民党51議席という予想外の結果となった。
朝日新聞の社説「一票の格差、選挙結果ゆがめた深刻さ」(7月15日)は、「目からウロコ」の内容であった。今回の選挙区での最大格差は、神奈川県と鳥取県の間の5.01倍だった。神奈川では69万票を集めた民主党候補が落選、鳥取では15万票台の自民候補が当選した。東京の小池さんなど大阪、北海道、埼玉では、50万票を超えた人が敗れた。選挙区で、民主党は2270万票で28議席を得た一方、自民党は1950万票で39議席を獲得した。民主党は『軽い一票』の都市部での得票が多く、自民党は人口が少なくて「重い一票」の一人区で議席を積み上げた。自民党の一人区勝敗は、21勝8敗であった。
また吉田徹北海道大准教授は、「不幸」な選挙だった、と朝日新聞で意見を述べている。第1に、民主党政権の中間テストのはずであったが、選挙の直前に鳩山氏が辞任し、菅首相が「替え玉受験」を行う形になった。第2に、菅首相が消費税を打ち出したが、自民党10%を「参考」としたため争点とはならず、有権者を混乱させた。第3に、選挙後の政権構想、連立の構図が描かれなかった。では、「幸福」な選挙とは何か、自分の一票の効果感が持てる選挙ではないか。
89年以来これまでも衆参の「ネジレ」があったが、今回は本格的な「ネジレ」で、法律が成立する見通しがなく、菅首相は「しょんぼり」しているのではないか。
民主党が後退した理由は
民主党政権は、表紙を替えて内閣支持率のV字回復を図ったが、一本調子で右肩下がり。これは、消費税もあるが、「政治とカネ」「普天間基地」で誠実でない態度をとったからではないか。鳩山氏は理想主義者であったが、現実主義の菅首相は、「最小不幸社会」などと言っているが、何が目標なのかわからない。田中真紀子氏は、「アキカン」と表現している。菅首相はディべートが得意であるが、やりこめることでなく、国民が一緒にやろうと思うかである。歴代の自民党首相の中には懐深い人物がいた。
菅首相は財務大臣としてギリシャ危機に直面し、財政再建を重視するようになった。優秀な財務官僚の入れ知恵があり、消費税の増税を打ち出したのではないか。800兆円もの借金があり、多くの国民が「それはそうだ」、孫に負担させるわけにはいかないと思ったのは素直な感情であった。しかし生活が苦しい中で、批判は民主党に向かい、自民党は抱きつかれて得をした。共産党は、法人税減税の穴埋めと訴えていたが、それはその通りだが、正論の空振りに終ったのではないか。
どうなる連立の構想は
無党派層の支持を集めたみんなの党は躍進し新党も多くできたが、個々の事情を考えると、1年先はわからないが、当面、民主党との連立は難しいのではないか。菅マニュフェストには、「コンクリートから人へ」はなく、「日米同盟を深化」と明記され、生活重視から経済・統治へとカーブを切った。政策的に似ている民主党と自民党による「大連立」という危険があるのではないか。消費税増税とセットで議員定数が削減されると、共産党・社民党などは議席を失う。憲法改正論者も蠢動しており、国民投票が勝負、のんびりしているわけにはいかない。
政局の焦点は、9月の民主党の代表選挙である。菅代表が延命できるのか、首相が毎年交代していいのか。小沢派、反小沢派、鳩山派がどう動くのか、先行き不透明である。
共産党への苦言と期待
私は、教条的護憲論者と言われ、憲法を大事にしてきた。その立場から、共産党、社民党には、しっかりしてもらいたいたいと思っている。共産党は、いいことを主張していても、なぜ支持が広がらないのか。「負けは負け」で、けじめが必要である。どうやったら立ち直れるか、きれいな文章ではなく、本気で総括する必要がある。ご健闘を期待する。(文責、編集部)
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