戦争はどのようにしてつくられるのか?!
幻のドキュメンタリー
「汝多くの戦友たち」について
「汝多くの戦友たち」について
4月に、友人のすすめでドイツ民主共和国(東独)のデファ社から1961年に日本労働組合総評会議に贈られたドキュメンタリー「汝多くの戦友たち」を、16ミリフイルムで観た。私はそれまで、この作品を知らなかった。鑑賞した90分間、無残な戦争を二度と繰り返すまいと訴える映像の力に、圧倒された。
作品は、ドイツが第一次世界大戦と第二次世界大戦を引き起こし、敗北に至るまでを数多くの実録映像で構成し、「労働者よ、お前たちは誰のために機械を動かし、誰がその銃をとるのか?」と問い、「自らの敵に、どうしてそんなに誠実なのか?汝多くの戦友たちよ」と結んでいる。この二つの戦争で戦死したドイツの若者たちは、600万人を超えるという。
いま、安倍内閣が、集団的自衛権の行使に踏み切ることを決定した。憲法九条を公然と踏みにじり、若者たちを戦場に送り込む法整備へと暴走している。その暴走を、私たちはとかく安倍晋三個人の資質、祖父(岸信介)のDNAを受け継いだ、極右政治家の行動としてのみ見がちで、その背後にある日米の独占資本の野望を見落としがちである。「汝多くの戦友たち」を観ると、独占資本家たちが
いかにして戦争をつくり出してゆくのかが、実にリアリティをもって迫り、理解できた。そして、いま私たちが直面している状況とあまりにもそっくりなことに衝撃を覚えた。
いかにして戦争をつくり出してゆくのかが、実にリアリティをもって迫り、理解できた。そして、いま私たちが直面している状況とあまりにもそっくりなことに衝撃を覚えた。
この作品を所有している共同映画社(藤野戸護代表)から提供された資料を読むと、制作は1959年でドイツ民主共和国(東独)デファ社、監督はアンドリュー・トルンディ。作品を構成しているフイルムの全てかどうかは分からないが、ドイツのベルリン陥落の際に、ナチスが撮影し所有していたフイルムをソ連軍が接収。そのフイルムがこの作品に使用されたとあった。それだけに、ドイツのカイザー、ヒンデンブルグ、ヒトラーをはじめ、カール・リープクネヒト、テールマン、レーニンなど歴史上の重要人物たちや、ナチスの国会放火事件などが次々と登場する。その一方で、1893年のエンゲルスの演説シーンなど、映画誕生(1896年)以前の映像など、一部、ミステリアスな映像も含まれている。そして、いまは崩壊した東独やソ連を美化している一面がある。そのような弱点を抱えた「汝多くの戦友たち」ではあるが、独占資本が戦争をつくり出す過程を具体的に描き、犠牲になる若者たちに「自らの敵に、どうしてそんなに誠実なのか?」と問いかける作品は、他に類がない。
共同映画社元代表で下町人間の会の山口義夫名誉会長の手記によれば、60年安保闘争さなかに共同映画社などがこの作品を輸入して上映しようと試みたが、税関の検閲で「残虐シーンを除く」ということでフイルムをずたずたにされ、やむなく総評とデファ社に相談し、デファ社から総評への寄贈と云う形でフイルムを得て、日本で再編集し、上映にこぎつけたとある。 その後の上映運動は残念ながら広がらず、今日まで埋もれたままになっていた。私はこの作品と出会って、いまこそ上映されるべき作品だと思った。戦争できる国づくりにひた走る安倍自公民政権を理解する上で、極めて有効な映像作品だと思い、共同映画社の藤野戸代表や下町人間の会の山口義夫さんらと相談しながら、どこでも気軽に上映できるようにと願い、フイルムからDVDにする作業に取り組んでいる。
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