2013年7月25日木曜日

法改正をめざす運動に求められるもの 
          前日弁連会長 宇都宮健児さん
 
グレーゾーン金利の廃止など、法律を変えた取り組みについて、構え、視点、留意点などについて、627日にインタビューしました。

 私はあるきっかけからサラ金問題にかかわるようになった。当時のサラ金の金利は年100%前後。無法状態を無くすには立法が必要と、「全国クレジット・サラ金問題協議会」を結成。被害者組織も最盛期には47都道府県に88団体できた。最初に1983年に「サラ金規制法」が成立、その後幾度か法改正したが、出資法の上限金利と利息制限法の制限金利との間のグレーゾーン金利が残った。 
逆に金利引き上げの危険も
 サラ金業界は、大もうけし06年には大手のサラ金の大半が一部上場、テレビでは1日中サラ金のCM流れる状況。05年に小泉郵政選挙で自民圧勝。サラ金業界は、金利規制撤廃を主張、小泉・竹中の規制緩和路線にも合致。貸金業政治連盟は自民や民主の有力議員にカネを配っていた。アメリカ資本がサラ金を買収、株を買っており、ブッシュ政権は、金利を下げるなと日本政府に圧力。金利が逆に引き上げられる危険があった。
 運動のウイングを広げなければと、連合も加わる中央労福協に「クレサラの金利問題を考える連絡会議」を結成、日弁連にも「上限金利引き下げ実現本部」がつくられた。本部長は日弁連会長、私が本部長代行となった。こうして、全国の弁護士会を動かせるようになった。
 高金利引き下げ署名を短期間に340万集め、金利引き下げを求める意見書は、43都道府県議会1136市町村議会で採決され、その地域を選挙区とする国会議員に大きな影響を与えた。
 世論対策では、朝日、毎日、東京は比較的消費者サイドだったが、読売、サンケイ、日経は業者より。読売に、グレーゾーン金利撤廃(以下撤廃と略)の記事を書かせることを重視、最終的に読売も撤廃すべきとの社説を打つようになる。
 テレビのワイドショーが国会議員に影響力があるので、ワイドショー対策をやって、みのもんたの「朝ズバッ!」などで取り上げてもらった。
 衆議院480人、参議院242人の中で多数派を形成できれば法律は出来る。国会議員対策は日弁連が中心なり、各弁護士会から地元の国会議員に要請と報告してもらい、「金利引き下げ賛成」◎、「どちらかといえば賛成」○、不明△、「どちらかといえば金利引き下げに反対」×、「強固な反対派」××と整理、報告のない弁護士会は督促した。
 各地で集会開催をお願いし、必ず地元メディアと国会議員への呼びかけを徹底した。
 自民党政務調査会に貸金業制度小委員会がつくられることとなった。政調会は自民党の国会議員であれば誰でも参加できる。私は日弁連代表として毎回小委員会に出席。各弁護士会から◎の議員に出席するよう要請してもらった。◎の若手議員が堂々と発言し古株の議員に対抗する。発言した議員に弁護士会からの激励を要請した。11回の議論を重視、サラ金業界寄りの議員を孤立させ、金利引き下げ派が自民党でも多数派になり、法改正が実現した。 
国会での多数派形成をめざすには
 国会で多数になるには、常に現場から発想し政治的立場を超えてつながることが重要。
国会開会中は、地方での集会等は土日にやらないと地元の議員は出られない。一般市民に影響与えるだけではダメ。
日弁連が院内集会を開催する場合、共産・社民の議員には頼みやすいので議員会館の部屋を取ってもらうと与党議員はこない。どういう伝手でもいいから自民、公明の議員に頼みなさいと言っている。
 議員要請の資料に「赤旗」記事を持っていくと偏見の目で見られる。内容が同じなら朝日、読売などにすべきだ。政党間のこまやかな、現実的な政治力学を理解すべきだ。
運動は楽しくやらないと長続きしない。秩父困民党の蜂起は、高利貸しの借金が払えず田畑を取られたことがきっかけ。この困民党の闘いを映画化した「草の乱」の上映運動を行う一方で決起集会に、困民党が蜂起した椋神社から当時の衣装でマラソンリレーをやり、このリレーには若手の自民党議員も参加した。
 要求が通らなくとも頑張り続けている運動はすごいと思うが、負け続ける運動は意気が上がらない。少しずつでも成果を獲得していくことが運動を継続する上でも重要。
10万人集会やっても、メディアが報道しなければあまり影響力ない。金利問題で500人の集会・デモだったが東京新聞が大きく報道、テレビも伝えた。少数でも大きな影響を与えることを考えるべきだ。 
政党の決めつけ
 運動をやっていて感じるのは政党に対する決めつけ。自民党は財界の味方と見られがちだが、一枚岩的な政党ではなく、一人一党、後援会政党の集まりだ。民主も同じようなもの。多様性がある。現在の政界では公明党がキー政党になっており、対策が重要だ。都道府県議会、市町村議会で金利引き下げの意見書を採択してもらう際は、まずどの政党に誰があたるか要請の仕方を工夫した。

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