比例定数削減問題と議員・国会・選挙制度
藤本齊
自由法曹団東京支部長
民主党政権は、「社会保障・税一体改革大綱」の中に、「衆院定数80削減」を明記しました。消費税の大増税計画を押し付ける際に、「自ら身を切る改革を実施した上で」と称して、比例定数削減に躍起となっています。しかし小選挙区制の弊害が露わとなる中、民意を正確に反映する選挙制度への抜本的な改革こそ求められています。議会制民主主義の根幹にかかわる問題であり、2月20日に開催された代表世話人会の「話題提供」において、藤本齊代表世話人(自由法曹団東京支部長)が、『比例定数削減問題と議員・国会・選挙制度』と題して報告しました。その概要は、次の通りです。
藤本齊
自由法曹団東京支部長
民主党政権は、「社会保障・税一体改革大綱」の中に、「衆院定数80削減」を明記しました。消費税の大増税計画を押し付ける際に、「自ら身を切る改革を実施した上で」と称して、比例定数削減に躍起となっています。しかし小選挙区制の弊害が露わとなる中、民意を正確に反映する選挙制度への抜本的な改革こそ求められています。議会制民主主義の根幹にかかわる問題であり、2月20日に開催された代表世話人会の「話題提供」において、藤本齊代表世話人(自由法曹団東京支部長)が、『比例定数削減問題と議員・国会・選挙制度』と題して報告しました。その概要は、次の通りです。
最高裁の判決(2011年3月23日)は、衆院選挙の「一人別枠方式」は憲法の「投票価値の平等」の要求に反しており、その廃止・是正を求めている。憲法13条に基づき、すべての選挙人を「一人前に扱え」ということである。しかし、定数を削減するという議論は、最高裁判決の精神からさえもドンドンとずれて、逆走突進中なのである。小選挙区制の導入で、国会は民意とかけ離れ、議員の劣化が深刻である。
衆院選挙制度の各党協議会では、民意をゆがめる現行の小選挙区比例並立制を見直すべきという意見が多くだされたが、樽床座長は2月15日に、座長私案として「比例定数80削減」を提示し、「比例定数の削減に伴い民意が過度に集約されることを補正する措置を講ずる」として連用制に言及した。
連用制はどの国でも実施されたことがない選挙制度で、公明党が提唱したものである。連用制は、小選挙区と比例代表を組み合わせた選挙制度のひとつで、比例代表議席の配分を、得票を「小選挙区の獲得議席+1」から順に割った商の大きいものから配分する。小選挙区議席を獲得できない中小政党に比例代表議席が優先的に配分されるため、現行の並立制に比べて中小政党が議席を得やすくなる。
「連用制」はよりましの制度か?連用制も小選挙区と比例代表を組み合わせた選挙制度で、その結果、小選挙区で議席を得られない政党は、比例区でも支持を失い、後退していかざるを得なくなる(「小選挙区効果」)。また、連用制の固有の問題点として、投票行動の結果や投票意思が恣意的に操作され、選挙が混迷することが指摘されている。(自由法曹団作成のパンフ『小選挙区比例代表連用制を検証する』を参照してください。)さらに自民党の議員から、「連用制」ならば「1票制が筋」と反論されており、「1票制連用制」は、少数政党排除の「切り札」となる危険がある。
しかも政府・民主党は、比例定数の削減とセットで連用制を提案しており、比例定数の割合が低下すれば、得票率と議席は対応しなくなる。
結局、現行の小選挙区比例代表並立制の集約(「小選挙区」)と反映(「比例代表」)の二兎追いの矛盾とゴマカシが破綻してしまっている。議会制民主主義を再生させるには、小選挙区制そのものを廃止し、民意を正確に反映する選挙制度へ抜本的に改革するしかない。(文責、編集部)