2011年11月3日木曜日

安心できる住居なくして真の復興はない 

   中島明子(和洋女子大・日本住宅会議・東日本大震災女性支援ネットワーク)
  住宅を失った路上生活者の支援をテーマにする中で、生活を再建するためにはまず安定した居住の場の確保が重要であり、その上で一人一人が抱える問題に対応 した支援を行うべきだとして、ハウジング・ファーストを掲げて研究してきました。今回の震災でも被災者にとってまず安心して寝ることができる住まいを優先 的に確保すべきです。被災者は現在様々なところで暮らしていますが、住宅の再建は今後も最重要課題です。

■避難所から仮設住宅の段階に
 9月に入り各地の避難所が閉鎖され、仮設住宅への移転が始まりました。そして仮設住宅の入居期限が来る2年後をにらみ、復興公営住宅の建設へと焦点が当てられてきています。
 過酷な避難所生活から仮設住宅に移った被災者は、ひとまずプライバシーを確保できてホッとしたところだと思います。しかし、ここで新たな問題も生じています。
1 つは、孤独死の危険や家庭内暴力等の問題が、家の中に入って見えなくなっていることです。ですから、問題が隠れないような住宅の配置が重要ですし、見守り 等の生活支援が必要です。2つには、とても「住宅」と言えない低質の仮設住宅がかなり供給されていることです。飯場か物置小屋といったプレハブ仮設は人気 もなく空家になるのは当然です。庇の無い窓、洗濯干し場が無い、隣近所の騒音に耐え、狭さ故に家族間でストレスを抱えているのです。支援団体による住宅改 修支援や園芸の支援に出会うと嬉しくなります。

■女性視点からの住まいと環境の整備を
今 度の震災地域は高齢化率が高く、高齢者への関心は高くなっていると思います。しかし高齢者に比べ、女性の要求は隠れていたり、リーダーに無視されている場 合が少なくありません。生理や妊娠等女性特有の健康問題や乳幼児を抱えていたり、介護の負担を負いながらこれからの生活再建を行って行くのは大変です。ま してや夫を失い生計の見通しがたたなかったり、元々低賃金の仕事に就いている女性たちの経済力は弱いのです。こうした女性たちを励まし、将来の生活再建に 向けての支援を行う「たまり場」づくりは、子どもや高齢者、障がい者等のマイノリティの人々にとっても有効です。女性を配慮した避難所や仮設住宅設置のガ イドライン等を見直しておく必要もあります。

■日常的な住まい・まちづくりが防災力と支援を可能にする
  これまで震災の状況や支援を見ていますと、日頃から生活を豊かにしたり、地域をよくする取組みが、被災しても立ち直る力をもっていることを痛感します。震 災直後から支援活動ができたところは、以前から様々な活動やまちづくりの取り組みが行われていました。木造仮設住宅を提供した岩手県の住田町は、震災前か ら計画をもっていたのです。
3.11の震災を経て、改めて社会保障としての居住政策と、災害に強い住宅の普及と、被災した場合の住宅再建の方法を、私たちも真剣に考えておくことの重要性を感じます。

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