大阪府の橋下知事が率いる大阪維新の会は、「国際競争に対応できる人材育成」を目指すとして、知事が教育目標を決め、教職員を成果主義で競わせる「教育基本条例案」、職員を懲戒や分限処分で従わせる「職員基本条例案」を府議会に提出しました。これは、学校行事で「日の丸」の掲揚、教職員の起立、「君が代」斉唱を義務付けた「君が代強制」条例(6月に強行採決)に続くもので、教育の条理を踏みにじり、強権政治を推し進める暴挙です。全国的な影響が考えられ、東京革新懇はすでに、条例案の撤回を求める声明を出しました。
11月27日(日)大阪府知事選挙・大阪市長選挙が実施されますが、この結果が、これらの条例案の成否に重大な影響を与えると考えられます。
10月の代表世話人会の「話題提供」として、この問題について、長尾ゆり全教副委員長(大阪教職員組合)が報告し、「撤回署名」への協力を訴えました。その概要は、次のとおりです。
「教育基本条例案」「職員基本条例案」の5つの問題点
① 政治の教育へのあからさまな介入
「教育行政からあまりに政治が遠ざけられ」「教育に民意が十分に反映されてこなかった」(前文)として、政治が教育に介入することを宣言している。これは、戦前の教育への反省から打ち立てられた教育の大原則を踏みにじるもの。
② 子どもたちを競わせ、学校を序列化
「他人への依存や責任転嫁をせず、互いに競い合い自己の判断と責任で道を切り開く人材を育てる」、「世界標準で競争力の高い人材を育てる」ことなどを教育理念とし、小中学校における学力テストの結果をホームページなどで公開、また、府立高校の「通学区域は府内全域」とし、「3年連続で入学定員を入学者が下回る・・・と統廃合しなければならない」と学校間競争を激化。
③ 教職員を脅して、学校を命令と処分の場に
「知事は、・・・学校が実現すべき目標を設定」、校長はこの指針をもとに学校運営を行い、「教員は、・・・校長の運営指針にも服さなければならない」。そして、5段階で人事評価を行い、給与・任免に反映させ、「明確な差異」を生ずるように。「2回連続D評価(注)となった職員は分限免職の対象」など、処分のオンパレード。(注)最下位で5%相当。
④ 父母、保護者もモノが言えなくなる
「保護者は、教育委員会、学校、校長、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない」としていますが、誰が「不当な態様」と決めるのか、父母の願いを退けて教育はよくならない。
⑤ 民」の名で「ハシズム」をねらう
「我が国社会の停滞を打破し、『民』主体の社会を実現するために公務員制度改革を行うべく、この条例を制定」(職員基本条例前文)と、「選挙で選ばれたのだから、知事の考えは府民の民意である。統一地方選で多数を得たのだから、維新の会が民意である」という考えは、多数の名による独裁で、まったく民主主義を理解していない。
そして、これらの内容は、関西財界が要望(「大阪府に教育改革を望む」2008年3月)してきたものであると喝破しました。
オール教育界が反対、そして幅広い大きな反対のうねり
校長を含む多くの教職員が反対しているだけでなく、大阪府のすべての教育委員が「子どもたちが被害を受ける」と反対を表明しています。
さらに日弁連会長・大阪弁護士会会長が声明をだし、日本ペンクラブが批判の見解を表明しています。
教育で子どもが一番
あらためて教育の基本原理が確認されたとして、「教育の営みを力で抑え込むことはできない」「教育においては、子どもが一番大事」「教育権は、父母・国民のもの」などを強調しました。
民主主義は問答有用
討論の中で三上満代表世話人は、独裁は問答無用だが、民主主義は問答有用で面倒なもの、競争主義は教育を歪める、と指摘しました。