2011年11月9日水曜日

大阪ハシズムの「教育基本条例案」がめざす子ども像は?       大阪維新の会  政治が教育に介入

大阪府の橋下知事が率いる大阪維新の会は、「国際競争に対応できる人材育成」を目指すとして、知事が教育目標を決め、教職員を成果主義で競わせる「教育基本条例案」、職員を懲戒や分限処分で従わせる「職員基本条例案」を府議会に提出しました。これは、学校行事で「日の丸」の掲揚、教職員の起立、「君が代」斉唱を義務付けた「君が代強制」条例(6月に強行採決)に続くもので、教育の条理を踏みにじり、強権政治を推し進める暴挙です。全国的な影響が考えられ、東京革新懇はすでに、条例案の撤回を求める声明を出しました。 
1127日(日)大阪府知事選挙・大阪市長選挙が実施されますが、この結果が、これらの条例案の成否に重大な影響を与えると考えられます。
10月の代表世話人会の「話題提供」として、この問題について、長尾ゆり全教副委員長(大阪教職員組合)が報告し、「撤回署名」への協力を訴えました。その概要は、次のとおりです。

 「教育基本条例案」「職員基本条例案」の5つの問題点
     政治の教育へのあからさまな介入
「教育行政からあまりに政治が遠ざけられ」「教育に民意が十分に反映されてこなかった」(前文)として、政治が教育に介入することを宣言している。これは、戦前の教育への反省から打ち立てられた教育の大原則を踏みにじるもの。
     子どもたちを競わせ、学校を序列化
「他人への依存や責任転嫁をせず、互いに競い合い自己の判断と責任で道を切り開く人材を育てる」、「世界標準で競争力の高い人材を育てる」ことなどを教育理念とし、小中学校における学力テストの結果をホームページなどで公開、また、府立高校の「通学区域は府内全域」とし、「3年連続で入学定員を入学者が下回る・・・と統廃合しなければならない」と学校間競争を激化。
     教職員を脅して、学校を命令と処分の場に
「知事は、・・・学校が実現すべき目標を設定」、校長はこの指針をもとに学校運営を行い、「教員は、・・・校長の運営指針にも服さなければならない」。そして、5段階で人事評価を行い、給与・任免に反映させ、「明確な差異」を生ずるように。「2回連続D評価(注)となった職員は分限免職の対象」など、処分のオンパレード。(注)最下位で5%相当。
     父母、保護者もモノが言えなくなる
「保護者は、教育委員会、学校、校長、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない」としていますが、誰が「不当な態様」と決めるのか、父母の願いを退けて教育はよくならない。
     民」の名で「ハシズム」をねらう
「我が国社会の停滞を打破し、『民』主体の社会を実現するために公務員制度改革を行うべく、この条例を制定」(職員基本条例前文)と、「選挙で選ばれたのだから、知事の考えは府民の民意である。統一地方選で多数を得たのだから、維新の会が民意である」という考えは、多数の名による独裁で、まったく民主主義を理解していない。
 そして、これらの内容は、関西財界が要望(「大阪府に教育改革を望む」20083月)してきたものであると喝破しました。

オール教育界が反対、そして幅広い大きな反対のうねり
 校長を含む多くの教職員が反対しているだけでなく、大阪府のすべての教育委員が「子どもたちが被害を受ける」と反対を表明しています。
さらに日弁連会長・大阪弁護士会会長が声明をだし、日本ペンクラブが批判の見解を表明しています。

 教育で子どもが一番
あらためて教育の基本原理が確認されたとして、「教育の営みを力で抑え込むことはできない」「教育においては、子どもが一番大事」「教育権は、父母・国民のもの」などを強調しました。

民主主義は問答有用
討論の中で三上満代表世話人は、独裁は問答無用だが、民主主義は問答有用で面倒なもの、競争主義は教育を歪める、と指摘しました。

2011年11月3日木曜日

安心できる住居なくして真の復興はない 

   中島明子(和洋女子大・日本住宅会議・東日本大震災女性支援ネットワーク)
  住宅を失った路上生活者の支援をテーマにする中で、生活を再建するためにはまず安定した居住の場の確保が重要であり、その上で一人一人が抱える問題に対応 した支援を行うべきだとして、ハウジング・ファーストを掲げて研究してきました。今回の震災でも被災者にとってまず安心して寝ることができる住まいを優先 的に確保すべきです。被災者は現在様々なところで暮らしていますが、住宅の再建は今後も最重要課題です。

■避難所から仮設住宅の段階に
 9月に入り各地の避難所が閉鎖され、仮設住宅への移転が始まりました。そして仮設住宅の入居期限が来る2年後をにらみ、復興公営住宅の建設へと焦点が当てられてきています。
 過酷な避難所生活から仮設住宅に移った被災者は、ひとまずプライバシーを確保できてホッとしたところだと思います。しかし、ここで新たな問題も生じています。
1 つは、孤独死の危険や家庭内暴力等の問題が、家の中に入って見えなくなっていることです。ですから、問題が隠れないような住宅の配置が重要ですし、見守り 等の生活支援が必要です。2つには、とても「住宅」と言えない低質の仮設住宅がかなり供給されていることです。飯場か物置小屋といったプレハブ仮設は人気 もなく空家になるのは当然です。庇の無い窓、洗濯干し場が無い、隣近所の騒音に耐え、狭さ故に家族間でストレスを抱えているのです。支援団体による住宅改 修支援や園芸の支援に出会うと嬉しくなります。

■女性視点からの住まいと環境の整備を
今 度の震災地域は高齢化率が高く、高齢者への関心は高くなっていると思います。しかし高齢者に比べ、女性の要求は隠れていたり、リーダーに無視されている場 合が少なくありません。生理や妊娠等女性特有の健康問題や乳幼児を抱えていたり、介護の負担を負いながらこれからの生活再建を行って行くのは大変です。ま してや夫を失い生計の見通しがたたなかったり、元々低賃金の仕事に就いている女性たちの経済力は弱いのです。こうした女性たちを励まし、将来の生活再建に 向けての支援を行う「たまり場」づくりは、子どもや高齢者、障がい者等のマイノリティの人々にとっても有効です。女性を配慮した避難所や仮設住宅設置のガ イドライン等を見直しておく必要もあります。

■日常的な住まい・まちづくりが防災力と支援を可能にする
  これまで震災の状況や支援を見ていますと、日頃から生活を豊かにしたり、地域をよくする取組みが、被災しても立ち直る力をもっていることを痛感します。震 災直後から支援活動ができたところは、以前から様々な活動やまちづくりの取り組みが行われていました。木造仮設住宅を提供した岩手県の住田町は、震災前か ら計画をもっていたのです。
3.11の震災を経て、改めて社会保障としての居住政策と、災害に強い住宅の普及と、被災した場合の住宅再建の方法を、私たちも真剣に考えておくことの重要性を感じます。