改めて外環道問題を考えよう
丸山重威 ジャーナリスト 東京革新懇代表世話人
東京の西部、関越道から東名高速東京インター間(練馬、杉並、武蔵野、三鷹、調布、狛江、世田谷)で建設が進んでいる東京外環道が問題になっている。今年は南アルプスを貫くリニア新幹線の工事も本格化する。住民の意思を無視して進む建設は、辺野古、原発などでも同じ。本当にこれでいいのだろうか。
東京外環道では、無関係のはずの地下40mの掘削現場から、酸欠空気が地上に上がり、野川の水面でぶくぶくと泡を立てたり、塀で囲ったヤードに地下水が浸水。立法当時の前提の「想定条件」が大きく崩れている。
昨年12月、訴訟に踏み切った住民は、問題を指摘した「住宅の真下に巨大トンネルはいらない! ドキュメント東京外環道の真実」を出版。
12月15日午後7時から、武蔵野公会堂で、「提訴1周年記念集会」を開いて、闘いの決意を固めた。
計画→凍結→地下化
東京外環道は、約60年前、高度成長政策華やかな1950年代後半に企画され、東京五輪後の1966年、都市計画決定された。しかし、住民の反対で、70年には、根本龍太郎建設相が「凍結」を宣言。約30年間動かなかった。
しかし自民党政権は88年、行革審・土地対策検討委が「大深度地下の公的利用に関する制度の創設」の検討を求めた提言を出したことを受け2000年5月「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(大深度地下法)を成立させた。土地利用を上下に拡大し、狭い日本の土地開発を進めようとする土建業界や財界の発想の具体化だ。
日本国憲法は、財産権を認める一方で、「正当な補償の下で公共のために利用することができる」と規定した。問題は、大深度地下法が①地下40m以深か基準杭の支持地盤上面から10mのいずれか深い方の地下を「大深度地下」とし使用認可の対象としたこと②しかし、法律に「補償」の規定はなく、住民は何の通告も受けず自分の土地の地下が掘られ、いつの間にか都市計画法の建築制限を掛けられて、財産価値も低下、危険状況が造られていること―だ。
異議申し立てから裁判へ
反対運動を進める住民は、国交省、都、事業者の東日本高速道路会社、中日本高速道路会社の事業者側の要請に応じ、「PI(パブリックインボルブメント)協議会」での話し合いに応じたり、説明会や事業者との個別の交渉、「外環の2」といわれる武蔵野、練馬の地上部分についての訴訟など、様々に反対、抗議活動を続けてきた。
しかし当局の対応は変わらず、住民側は、大深度地下使用認可と都市計画事業の承認、認可について、約1200件の異議を申し立て、口頭陳述も実施した。当局はすべて棄却・却下。このため、住民は2017年12月18日、13人の原告が無効確認などを求め行政訴訟を提起した。
地下から酸欠気泡
実際に何の相談もないまま、自分の住宅の下、40mの地下に、直径16mのトンネルが掘られることは、想像しただけでも不気味だが、巨大マシンがモグラのように地下を進む中で、5月には「関係がない」とされた地上にまで、酸欠の気泡が上がって来た事件があり、住民の不安は一段と高まっている。
地下トンネルでは、他のトンネルでの工事中何人も死んだ事故あったり、地下水の水質、水位の変化、枯渇、地盤の沈下、陥没、地震の影響などが予想される危険が大問題だが、同時に、1兆6000億円もの巨費を投じてこの道路を建設する意味があるのか一方的に建築制限が掛けられ国の先買い権が発生する大深度の問題をどうするのか。何の回答も出ていない。
国民の生命、生活を無視、建設事業をごり押しする政権の姿勢。国土破壊を止めるためにも政治の変革が必要だ。