2016年9月5日月曜日

安倍政権を支える日本会議と「日本会議議連」
      俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長) 

安倍政権は日本会議内閣である
 安倍晋三首相は歴史修正主義者の極右政治家であり、安倍政権は極右内閣である。第3次安倍再改造内閣では、日本最大の右翼組織である改憲・翼賛の日本会議と連携する日本会議国会議員懇談会(「日本会議議連」)に所属する大臣は16人(80%、公明党の石井国交相を除けば85%)、首相補佐官と官房副長官の2人、副大臣14人、政務官14人が同議連であり、大臣・副大臣・政務官・首相補佐官・官房副長官全体に占める割合は62.3%である。 
日本会議・「日本会議議連」の設立
日本会議・「日本会議議連」は、何時、どのようにして生まれたのか。97530日、右翼組織の日本を守る国民会議と宗教右翼組織の日本を守る会とが組織統一を行ない日本最大の改憲・翼賛の右翼組織「日本会議」が発足した。日本会議が発足する前日の97529日に、日本会議を全面的にバックアップし連携する目的で結成されたのが超党派の日本会議国会議員懇談会(「日本会議議連」)である。156月現在の「日本会議議連」の役員は表の通りであり、安倍政権の現閣僚や前閣僚、自民党幹部などの顔が並んでいる。
 「日本会議議連」の名簿は非公開であり、議連メンバーを知るのは容易ではないが、筆者は97年から今日まで何回か名簿を入手した。それによれば、「日本会議議連」に参加する議員は、結成時衆参189人だったがその後増え続け、20159月現在281人になっている。
「日本会議議連」は超党派であるが約9割は自民党であり、自民党内の「日本会議議連」メンバーは衆参共に一大勢力である(衆参議員717人の約4割)。これだけ強大化した右翼議連がその中心人物を総理・総裁に押し上げたのが第1次・第23次安倍政権誕生の舞台裏である。日本会議と同議連は綿密に連携して日本の政治を動かしている。 
日本の政治・社会・教育などを支配する日本会議・「日本会議議連」
日本会議国会議員懇談会の主な役員
               2015610日現在
役 職
議 員 名
特別顧問
麻生太郎 安倍晋三
顧 問
谷垣禎一 亀井静香(無所属)
相談役
額賀福志郎 石破 茂 鴻池祥肇
会 長
平沼赳夫(次世代)
会長代行
中曽根弘文
副会長
小池百合子 下村博文 菅 義偉 高市早苗 橋本聖子 松原 仁(民主) 松野頼久(維新)等
幹事長
衛藤晟一
幹事長代行
岩屋 毅
副幹事長
井上信治 江藤 拓 加藤勝信 等
幹 事
古川禎久 城内 実 中山泰秀 等
政策審議会長
山谷えり子
政策審議副会長
萩生田光一 稲田朋美 義家弘介 有村治子 礒崎陽輔 佐藤正久 長島昭久(民主) 中山恭子・松沢成文(次世代)等
事務局長
鷲尾英一郎(民主党)
事務局次長
木原 稔 馬場伸幸(おおさか維新)
島尻安伊子 丸川珠代 
(※自民党以外のみ所属政党を記述。政党名などは当時)
 「日本会議議連」は、「歴史・教育・家庭問題」(座長・高市早苗=07年当時、以下同じ)、「防衛・外交・領土問題」(座長・安倍晋三)、「憲法・皇室・靖国問題」(座長・鴻池祥肇)の三つのプロジェクトを設けて、合同役員会などで日本会議と協議し、日本会議の要求・政策を国政に持ち込む活動をしている。また、「日本会議議連」は、憲法、防衛・基地、領土問題、皇室制度、危機管理などをテーマに日本会議の中心メンバーの櫻井よしこ(ジャーナリスト)、百地章(日本大学教授)、西修(駒澤大学名誉教授)、長尾一紘(中央大学名誉教授)、長谷川三千子(埼玉大学名誉教授)、大原康男(国学院大学名誉教授)などを講師に勉強会を行い、「理論武装」と「意思統一」を行って活動している。こうした活動の上に、「日本会議議連」は、146月に「皇室制度PT」(座長・衛藤晟一)、1411月に「憲法改正PT」(座長・古屋圭司)の2つのプロジェクトチーム(PT)を設置して、勉強会と政策づくりを行っている。
 日本会議と「日本会議議連」は日常的に連携をとり、合同役員会などで情勢認識や方針を確認しているが、07107日には、合同で「設立10周年記念大会」を開催した。こうした右翼組織と右翼議連の連携によって、日本の政治や社会、教育に重大な影響を及ぼしてきた。「影響を及ぼす」というよりも、日本会議の政策・要求が「日本会議議連」の活動によって、実現したり、政府の政策を断念させたりしてきた。
 日本会議は、全国に約38,000人の会員を擁し、47都道府県本部と248支部を設置し、1600人を超える地方議員による日本会議地方議員連盟や日本女性の会、日本青年協議会などの組織をもって草の根の右翼運動を展開している。日本会議は、これら議連や組織を中心に、課題別のフロント組織を立ち上げて「国民運動」を進めてきた。その結果、日本を守る国民会議時期も含めると日本の政治や社会、教育に重大な影響を及ぼす「成果」をあげてきた。その主なものは、次の通りである。
 元号法制化の達成、政府主催の天皇奉祝行事の実現、女系女性天皇容認の皇室典範改定阻止、国旗国歌法制定、中学校教科書の「慰安婦」記述削除、教育基本法「改正」、選択的夫婦別姓法案阻止、外国人地方参政権法案阻止、検定制度改悪と教科書統制強化、道徳の「教科化」実現、例年の815の靖国神社参拝運動の広がり、領土問題での排外主義の広がりと教科書への領土問題の政府見解の記述実現、育鵬社教科書の採択などである。
 このように見てくれば、極右組織・日本会議が掲げた要求・課題が、連携する国会議員・地方議員や日本会議の会員、地域支部、日本女性の会などの運動によって、実現してきた恐ろしい構図が明らかになってくる。そして今、日本会議の悲願(安倍首相の悲願でもある)の憲法「改正」の実現に向けて、美しい日本の憲法をつくる国民の会をつくり、「戦争する国」を実現する「草の根改憲運動」に全力をあげている。

 なお、日本会議及び「日本会議議連」についての詳細は、拙著『日本会議の全貌―知られざる巨大組織の実態』(花伝社)を参照されたい。(本文中敬称略)