-安倍政権で日本経済・国民生活はどうなる-
今宮謙二さん(中央大学名誉教授)
アベノミクスの3本の矢と言われるものは、財政出動、金融緩和、成長戦略であるが、これは折れた矢どころか壊れた矢である。
財政出動の大型公共事業は、1995年からの10年間で630兆円の公共事業計画による無駄遣いと赤字国債の強大化を招き、その後の財政再建による社会保障の切り捨てで民主党政権誕生につながった路線である。
金融緩和も2001年から量的緩和が行われたが、未だ不況から脱し得ていない。
成長戦略も大企業中心で、金融危機と格差の拡大をもたらしたものであり、3つともすべて失敗したものである。
アベノリスクの効果として株価上昇と円安が言われている。株の上昇は、海外投機マネーの流入による一時的なものであり、世界的金融緩和によるアメリカなどの株価上昇も左右している。
円安は、投機マネーの動きとともに、貿易収支と経常収支の赤字化、日米金利差など、日本経済の中に円安の方向に行かざるを得ない条件の反映だ。
アベノミクスの本質は、財界の主張する日本経済の六重苦(超円高、高法人税、電力不足、雇用規制、環境規制、TTP参加の遅れ)の克服との主張を鵜呑みにするものであり、新自由主義の徹底化であり、消費税増税の実施に向けた条件づくりである。
アベノミクスはアベノリスクであり、財政危機の拡大、不況の激化と物価上昇、貧富の格差の拡大をもたらすものである。
日本経済の七重苦(①低賃金と労働条件悪化、②高失業、③貧富の拡大、④大企業の社会的責任の欠如、⑤産業空洞化、⑥農水産業と中小企業の衰退化、⑦原発による国民の命・健康、生活と環境の破壊)の克服のために、日本経済構造の見直しとルールある社会づくりが求められる。